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友人契約  作者: マリーゴールド
53/60

嫌われたって友達ですか?(1)

 

 ――――――――――――


 オレンジに染まる街路樹。

 夕陽を照り返すビル。

 マンション。

 その背景に秋の色を見せる六甲の山々。

 ガタンゴトン、と単調なリズムに揺られて天宮恵理は、窓の向こうに流れていく景色を眺めていた。


 あれからもう、二週間が経過した。

 その間、何度か学校で一ノ瀬に話しかけようと試みたが、声をかける直前で、あの時の一ノ瀬の顔が、眼が、冷ややかな視線が蘇り、どうしても声をかける事が出来ないでいた。

 このままいたずらに時間が経過してくのはまずい。

 時間が解決してくれる問題もある、だが勿論そうじゃない問題もある。


 私はこれまで、友達に嫌われたことなんてないと思っていた。

 違ったんだ。

 喧嘩するほど誰かと真剣に向き合った事がないだけだった。

 嫌われても仲直りしたいと思えるほど、大切にしたい関係性を築こうとした事がなかった。

 表面的に話をして合わせて、ただ教室で浮かないように、徒党を組んで味方のふりをして。

 そんな薄っぺらい人間関係しか築かなかった結果がこれだ。

 今更謝ったところで、一ノ瀬が許してくれるのか。どうすれば以前の関係に戻れるのか、わからない。


 摩耶駅に着いた電車から降りる。

 耳に差したままのイヤホンから聴こえる歌は、『失敗したって構わないさ。何度でもやり直せるでしょ』と言っていた。

 ……綺麗事だ、と思った。

 17年しか生きていない私にだってわかる。

 世の中には取り返しのつかないこともあるんだ。

 どんなに悔やんでも、口を突いて出た言葉は決して消えない。

 一ノ瀬を傷つけて、嫌われてしまった事実も。

 壊れてしまった関係性は、元と同じようには戻らない。


 改札機を出たところで、立ち止まり、上を向く。

 ……駄目だ。泣いたって、何も変わらない。


 トントン、と肩を叩かれて、私はイヤホンを外しながら振り向いた。

 長くてサラサラした金髪、すらりと背が高くて、とても年下には見えない大人びた顔つき。

 一ノ瀬の妹、和葉ちゃんがそこにいた。


「やっ。恵理ちゃん偶然だねー!今、帰り?」


 その無邪気な笑顔にホッとして、張り詰めていた心が一気に緩んでいく。


「……和葉ちゃん。どうしよ、私……、一ノ瀬に、嫌われちゃった……」


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