すれ違っても友達ですか?(3)
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球技大会の打ち上げは、学校から最寄り駅の近くにあるファミレスで行われる事となった。
ウチのクラスの他にも、何クラスか打ち上げを行なっているようで、店内は騒がしい生徒たちに占拠されてしまっていた。
学校行事のイベント事の後ということもあり、みんな浮かれているようで、あちこちの席で男女入り乱れて談笑していた。
私はいつも通り、両脇を由紀や美月、花菜で固めている。この四人で集まっていれば、大抵の男子どもは気圧されて近づいて来ないでくれる。
閉会式の後、体育館の片付けの時のことを思い出して、頭を抱える。
……おかしい。絶対、おかしい。
一ノ瀬に、それとなく話しかけたのだ。
つい、怒りに任せて我を忘れてしまったと、ゴメンと、謝った。
そしたら一ノ瀬も「……俺のほうこそ。天宮が怒った理由は、やっぱりわからなかったんだけど……。でも、ごめん」と謝ってくれた。
これで一件落着、仲直りだと思った。
ところが、そのあと何を話しかけても一ノ瀬はうわの空で、ああとか、うんとか、適当な相槌を返すだけ。
実行委員なのに、クラスの打ち上げに参加しなかったのもおかしい。
「ごめん」と言った時の、一ノ瀬の苦しそうな、自分を責めるような表情がやけに印象的で頭から離れない。
「恵理ちゃん、大丈夫?」
声に反応して隣を見ると、花菜が心配そうな顔で見つめていた。
「恵理ちゃん、ずっと考え事してるでしょ?なにか悩み事でもあるのかなってぇ」
「い、いや、別に大したことじゃ……」
「まあー、恵理ちゃんが抱える悩みがあるとすれば、きっとそれは一ノ瀬くんのこと、くらいだろうけど……」
うっ……見透かされてる……。
さすが花菜だわ……。
「そういえば、教室の前で一ノ瀬くんもなんだか様子がおかしかったからぁ。もしかして、喧嘩でもしたのかなって……」
「えっ、教室の前って……」
「うん、ほらぁ、トイレから帰ってきた時にね。教室の扉の前に、一ノ瀬くんが……って、恵理ちゃん?」
サァー、と血の気が引いていくのがわかった。
あの時、教室の扉の向こうに一ノ瀬がいた?
花菜が帰ってくる直前の話題といえば……。
きっと聞かれたんだ。
『私が一ノ瀬みたいなオタクを好きになるわけないでしょ』
そう怒鳴った声が、教室の外まで聞こえていたんだ。
でも、あれは売り言葉に買い言葉というか、由紀たちを納得させるために言っただけで、決して本心なんかじゃない。
誤解だ。
だけど、そんな事情など一ノ瀬は知る由もない。
早急に謝罪して、誤解を解く必要がある。
私は手に持ったスマホを見つめる。
……駄目だ。
電話で済ましていい案件じゃない。
ちゃんと直接会って、頭を下げて謝らないと。
だって、私は一ノ瀬を傷つけてしまったのだから。