すれ違っても友達ですか?(2)
『私が一ノ瀬みたいなオタクを好きになるわけないでしょ』
確かに、そう聞こえた。
もうすぐ閉会式で、クラス委員の招集がかけられていたため、和樹は天宮恵理を探していた。
メールで伝えようかとしていたら、たまたま通りがかった松永花菜に天宮の居場所を教えられたのだ。
直接会うのは気まずくて憚られたが、メールだと気づかないかもしれないし、居場所を聞いた以上、会いに行ったほうが確実だろう。
教室に天宮の姿を確認した和樹は、扉に手をかけたその時、立ち聞きしてしまった天宮の言葉に身体を硬直させた。
別に、ショックなんかじゃない。
ああ、そうだ。
最初からわかってたじゃないか。
相手はあの天宮恵理だ。
俺なんかが期待していい相手じゃないことくらい、わかっていただろ。
だから、こんなのは、全然ショックなんかじゃない。
「一ノ瀬くん、どうしたの?」
背後からかけられた声に、はっとして振り返ると、松永花菜が不思議そうな顔でこちらを伺っていた。
「あ、ああ。いや、天宮……さんを、探してたんだけど、取り込み中みたいだからさ。松永さん、悪いけど天宮さんにクラス委員の招集がかかったって、伝えてくれないかな?」
「いいけど、大丈夫?なんか、一ノ瀬くん恐い顔してるよ?」
「えっ、そ、そう?あはは……」
そう言われて和樹は、情けなく笑ってみせる。
今の自分は、我ながらさぞ不細工なツラをしているに違いない。
「あ、じゃあ俺、もう行かないとだから」
「えっ、ちょっと。一ノ瀬くん?」
一方的に話を打ち切って、廊下を駆け出した。
胸が痛い。頭が重い。
油断をすると、喉のずっと奥から何か込み上げてきて、上擦った声が出そうになる。
全然、ショックなんかじゃないのに。




