宣言すれば友達ですか?(4)
――ズルい。そんな瞳で見つめられて懇願されれば、世の大抵の男子は断ることが出来ないだろう。
つまり、天宮は『自分に対して下心を持たない異性の友達』を求めているらしい。
しかし、はっきり言っておきたいが、これは明らかに人選ミスだ。自分は手紙を受け取り、ここに来るまでに一割、もしくは三割か、あるいは五割くらいの下心があって、のこのこやってきたのだ。
扉を開けて、待っていたのが天宮恵里だと知って、こんな可愛い子でラッキーなんて思ったし、今も、これまで碌に女子生徒と会話する機会もなかった自分の胸はドキドキしっぱなしだ。
こういうのは、例えば三好のように、イケメンで、可愛い彼女がいて、浮気する気もなく、天宮のことなんて異性として見ずに済むような、女慣れしている男に頼むべきなのだろう。間違っても自分のように、ちょっと話かけられただけで勘違いしてしまうような恋愛弱者に頼むことではない。
天宮も、なにか思いつめたような様子で、冗談のように感じられるこの話も、彼女にとっては大事なこと、なのかもしれない。
だったら尚の事、自分はこの話を断るべきだと思った。
「…………」
だけど。
こんなことをお願いしてきた天宮が、和樹のことを異性として『ありえない』と思っているのはわかった。しかし、例えば、天宮と親交を深めることで、その友達なんかと仲良くなるきっかけが生まれたりするんじゃないだろうか。
天宮は、その見てくれの良さから『リア充グループ』の上位に位置する女だ。その友達となると、当然、レベルの高い美人が揃っている。
経験上、いわゆる美人には、傲慢で、選民意識の高い奴と、見た目同様に中身まで綺麗な人が存在する。どうせ天宮も前者だろうが、後者のような、真の美人とお近づきになれるチャンスが生まれるかもしれない。
下心しか見えない動機だが、『天宮に対して下心を持たない』ならば問題ないはずだ。
天宮も自分のことを利用しようとしているのだ、天宮のことを利用しようと考えても、きっとこれはお互い様だ。
それに、これは自分が、ずっと待ち望んでいた『代り映えしない日々を変えるきっかけ』かもしれない。
和樹は再び、天宮へ向き直る。
覚悟は決まった。
――こうして、俺たちはこの日、『友達』になった。