あの金髪美女は誰ですか?(3)
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水着から着替えて、デカパトスを後にする。
電車に乗って、横並びの座席シートに腰を下ろし、ガタンゴトンと単調なリズムに揺られていると、少し熱っぽい感じがした。
唾を飲み込むたびに感じる喉の痛みに、こめかみの辺りに鈍い痛みを感じる。
どうやら、嘘から出た真というやつか、本当に風邪をひいてしまったようだ。
なんだか嘘をついたバチが当たったみたいで、バツが悪い。
折角の、高校二年の夏休み。
なにやってんだろ、私……。
摩耶駅に着いて、電車を降り、フラフラと改札を抜けると、前を歩くカップルに見覚えがある顔を見た。
「えっ……一ノ瀬……?」
見ると、一ノ瀬が背の高い金髪のお姉さんと並んで歩いていた。
二人は冗談を言い合うみたいに、仲よさそうに話しながら歩く。
一ノ瀬に、妹さんはいるが、お姉さんがいるなんて話は聞いたことがない。
よく見ると、一ノ瀬は両手に紙袋を下げていて、一緒にショッピングを済ませてきました、という具合だ。
あの金髪のお姉さんは、いったい誰なのか。
一ノ瀬は、買い物の荷物持ちとして、仲のいい女となら、誰とでも街に出かけるような奴だということは、少し前にわかっていた。
つまり、あの金髪美女は、私の知らない一ノ瀬の近しい友人の可能性があるわけだ。
まさか、ここに来て幼馴染なんかが登場するのか。
問い詰めてやろうと、一ノ瀬たちの向かったほうへ急いだが、角を曲がったあたりで完全に見失ってしまった。
「……ホント私、なにやってんだろ」
恵理は、体調もよくなかったので、諦めて帰ることにした。