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友人契約  作者: マリーゴールド
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あの金髪美女は誰ですか?(2)

「うわ、ぬるい……」


 最初、流れるプールに入った恵理たちは、人混みの中である程度固まって泳いだ。

 水温は、人が多いせいか、照りつける日差しのせいか、思いのほかぬるかった。

 そのうち、由紀があれやりたい、と言って大きな滑り台を指差した。

 ボートに二人一組で乗って滑るウォータースライダーだった。

 由紀は彼氏と一緒に滑るし、そうなると構成人数的にも3対3となり、折角だから、と男女それぞれペアで滑ることになった。

 私は磯部とペアを組まされることになった。


「恵理ちゃんって、普通に可愛いよね。ホントに彼氏いないの?共学の男子って見る目ねーんだなあ」

「はあ……まあ……」


 列に並んでいる間、磯部がずーっと話しかけてきた。

 恵理は、いつも通り適当にあしらう。

 最近は、押しても引いてもなびかない暖簾みたいな男を相手にしていたから、こうガツガツと押してくる男には懐かしさすら感じる。

 誰かさんにも、磯部の半分、いや、一割でいいから見習ってもらいたいものだ。

 順番が近づくにつれ、階段を昇る。

 その度に、磯部の口数が減っていき、そわそわし始めた。


「ん?……ねえ、もしかして、高いところ怖かったりする?」


 磯部は、そう聞かれてギョッとし、少し照れた感じに視線を逸らす。


「はは……実は苦手だったりして。ダサいから隠したかったんだけどなあ……はあ」

「ふーん。やっぱり辞める?私は別に構わないけど」

「いや、折角並んだし。それに、他のやつらに、からかわれるのも嫌だし、空気読めない奴にもなりたくないから……」


 磯部は、そう言って覚悟を決めたようだが、表情はとても固い。

 ……なんだ、磯部も可愛いとこあるじゃん。


「ふふっ、まあ、頑張りなよ」


 可笑しくて、くすくす笑っていると、磯部は惚けた感じでボーッとこちらを眺めてきた。

 心なしか、顔が赤いような気もするけど、日焼けでよくわからなかった。



 ――――――――――――



 磯部は少し顔色が青ざめていたようだが、無事にウォータースライダーも終わって、全員で昼飯をとろうという話になり、プール内にあるフードコートで昼食をとることにした。

 昼食中も、正面の席に陣取った磯部は、男子校でサッカー部してても全然モテないとか、部活が忙しすぎて出会いなんて全然ないとか、聞いてもいない磯部の恋愛事情を聞かされ、私は適当に相槌をうった。

 トイレに行く為に席を立ったら、花菜も一緒についてきた。

 洗面台で手を洗っていると、花菜は隣に並んで話しかけてきた。


「恵理ちゃん、浮かない顔してるねえ」

「え、そうかな。うーん、まあ……」


 予定外の男女混合に、若干の動揺はあったかもしれない。それでも、それなりに楽しんではいるつもりだったが。


「男の子たちと遊んでるところ、一ノ瀬くんには見せられないもんねえ」

「うっ……」


 どうやら、花菜には何もかもお見通しらしい。


「ふふっ、私は恵理ちゃんの味方だから。大丈夫、私に任せておいて」

「えっ……うん……」


 そう言って、みんなの所に戻る。

 昼食をとり終えたみんなは、もうひと泳ぎしようという話になったが、花菜が由紀に声をかけた。


「由紀ちゃん、あのね、恵理ちゃんが、今朝からちょっと具合悪いみたいなんだよねー?」

「えっ、そうだったの?恵理、大丈夫?」

「……あー、うん。ちょっと風邪気味かなって、ははは……」


 言うと、由紀は本気で心配してるようで、形のよい眉をひそめて、両肩を抱かれた。


「恵理、そういうの、ちゃんと言わなきゃ駄目じゃん。大丈夫なの?」

「あ、うん。ごめんね、プール楽しみにしてたから、言い出し辛くって」


 横目に花菜のほうを見ると、可愛らしく舌を出して目配せしてきた。

 尚も心配そうに由紀が気遣ってくれる。


「恵理、先に帰りなよ。水着でプールなんて、悪化したらどうすんのよ」

「うーん、ごめんね。悪いけど、そうさせてもらおうかな」


 そう言って、恵理はグループから外れて先に帰ることになった。

 磯部が、心配だから送ると言い出したが、花菜に「私たちはもう少し遊んでこーよ、変に気を遣ったら恵理ちゃんも心苦しいでしょ?」と、腕を絡め取られ、二の腕に胸を押し当てられると、耳まで真っ赤にして押し黙った。


 ……やっぱり私は、時々だけど花菜が恐ろしい。



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