あの金髪美女は誰ですか?(1)
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日曜日。
由紀たちとプールで遊ぶ約束していた恵理は、集合場所のマリンパーク駅で他の面子が来る待っていた。
デカパトスという、ウォータースライダーや流れるプールなど、いくつかアトラクションのあるプールに行く予定だ。
新しい水着も買って、意気揚々とこの場所に来たかと思われるかもしれないが、実は違った。
昨日の晩に、由紀から「あたし、彼氏連れてくから」というメールが送られてきてから、ずっと嫌な予感がしているのだ。
由紀が突然、予定を変えたり我儘を通すのは、いつものことなのでもう慣れたけど。
先にコンビニ行って、飲み物でも買っとこうかなと思っていたら、花菜と美月がやって来た。
「おはよーう、恵理ちゃん早いねー」
「おはよ。さっき来たとこだよ。あとは由紀だけね。なんか、彼氏連れてくるとか言ってけど」
「うん、それが……」
恵理が花菜たちと話していると、改札口の方から騒がしい集団がやって来た。
肌を色黒に焼いた男子四人グループと、その中に、由紀の姿もあった。
なにあれ。まさか全員、由紀の彼氏、なわけないよね。
「お待たせー」
「由紀、おはよ。ねえ、その人たちは」
「あー、昨日言ったでしょ。彼氏連れてくって。そしたらさ、彼も友達誘いたいって言ってさ。あたしも友達誘ってくし、じゃあ四対四でいいよねって」
いいよね、って、こっちは全然よくない。
見ると、花菜と美月もちょっと困った顔をしていた。
嫌な予感ほどよく当たるというが、かくして私の予感も的中したわけだ。まったく嬉しくない。
由紀の勝手は、今に始まったことではないからもういいけど、せめて一言くらいは欲しいものだ。
「ねえ、由紀。いつも言ってるけどさ、せめて一言くらいは」
「なによ。なんか文句でもあるわけ?」
由紀が形のよい眉を歪ませ、不機嫌そうに視線を逸らす。
「ま、まあまあ!ごめんね!俺ら突然お邪魔して!なるべく、迷惑かけないようにしてるからさ!」
日焼け男の一人が割って入ってきた。
「……いえ、ごめんなさい。別に迷惑ってわけではなくて」
「そっか、よかったー!俺、磯部健一って言います。俺ら巻川第二のサッカー部なんだ。よろしくね、えっと」
「……天宮恵理です。よろしく」
恵理は、はあ、と小さく溜息を零した。
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それぞれ更衣室で別れて、水着に着替えたら入口に集合することとなった。
デカパトスは、家族連れや、大学生らしい男女グループや、初々しい高校生カップルなどで賑わっていて、それなりに混雑していた。
日焼け男たち四人は、それぞれトランクス型の水着を履いている。サッカー部とか言ってたか、運動部らしい鍛えられた身体をしており、薄っすら割れた腹筋をお互いに自慢しあっていた。
花菜はフリルの付いた花柄の水着、美月と由紀はビキニで、美月が白のストライプ、由紀は黒の際どいやつだった。
由紀はモデルみたいにスタイルが良くて、その白い肌をこれ見よがしに晒していた。
だけど、男子共の視線を釘付けにしていたのは、由紀の抜群のプロポーションではなく、花菜の豊満に揺れる胸元のほうだったりする。
なんにせよ、この華やかなグループで行動を共にすると否応なしに目立ってしまう。
……さすがに、居ないとは思うが、こんなところを一ノ瀬には見られたくないなあ、なんて恵理は不安に思っていた。