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友人契約  作者: マリーゴールド
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関係を疑われたら友達ですか?(2)

 授業が終わって、恵理が配布されたプリント類や筆記用具を鞄にしまっていると、クラスの友人の松永花菜が声をかけてきた。

 教室では、竹内由紀、杉咲美月と、花菜の四人で過ごすことが多い。

 今日は、この後、花菜と二人で買い物がてら三ノ宮を散策する予定にしている。

 由紀と美月は、「じゃあね」と言って先に教室を出て行く。その後ろを、仁川くんと一ノ瀬が付いて行くように歩いていった。

 最初から、一ノ瀬とは駅で待ち合わせをしていたわけでもなかったけど、まあ、LINEもあるし、待ちぼうけをくらうということはないだろう、と思っていると、花菜が「うちらも行こ」と言って手招きした。



 ――――――――――――――



 買い物する前に昼食をとることにした恵理たちは、三ノ宮のマクドナルドに入り、席に着いた。

 花菜は、アイドルグループのセンターみたいな、黒髪のミディアムヘアーに、くりっとした黒目がちな大きな瞳、口角が上がっていて、いつもニコニコしているような柔らかい印象を受ける。

 これで上目遣いにお願いでもされれば、断れる人間はそうはいないだろう。

 私たちの中では、由紀が一番の美人で、顔のつくりなんかモデルみたいに派手な顔立ちをしているが、男子にモテるのは、圧倒的に花菜が上だ。

 花菜は自分がどう振る舞えば可愛いか、よく知っている。

 実際、何をしてても可愛いし、おっとりした雰囲気に、周りへの気遣いも勿論できて、いわゆる女子力が高い。

 かと言って、性格が悪いわけでもなく、女子からも好かれるくらいで、私も由紀や美月より、花菜の方が話しやすく感じている。

 成績は中くらいだが、頭の回転の速い子なのだ。

 伊達に黒髪のまま、クラスのカースト上位グループにいるわけではない。


「ねー、私さあ。恵理ちゃんに聞きたいことあるんだよねえ」


 花菜が甘ったるい声を出す。この子のこれは作っているのではなく、どうやらデフォルトでこの声らしい。


「ん、なーに?」

「恵理ちゃんはさ、最近、一ノ瀬くんと仲良いよね?」

「……えっ、そ、そう?」


 恵理は、思わずポテトを食べていた手を止めた。

 一ノ瀬とは、学校では朝に挨拶を交わすくらいで、話しかけたりしないし、目も合わせないようにしている。

 別に隠してるつもりはなかったが、なんとなく、目立って噂にされるのも面白くないし、由紀たちに、からかわれるのも目に浮かぶから、接点を持たないようにしていたはずだ。


「んふ、私、恵理ちゃんが一ノ瀬くんと待ち合わせして、一緒の電車で帰るとこ、たまに見かけるんだよねー」

「いや、それは……」


 別に待ち合わせの約束をしていたわけではない、が、今の口ぶりだと、花菜が見かけたのは一度や二度ではなさそうだ。これで待ち合わせてないと言っても、余計に話が拗れる気がする。


「二人は付き合っているのかな?」

「ち、違がうし!そんな訳ないでしょ!一ノ瀬とは、たまたま住んでるとこ近くて、たまに同じ電車で帰る時に、喋ったりしてるだけで」


 ふぅん、と花菜はニコニコしながら、こちらの様子を見ている。


「でも、教室じゃあ、あんまり二人で話したりしてないね」

「そりゃ、ただの……友達だし。付き合ってもないのに、ずっと一緒にいたら、由紀たちになんて言われるか……」


 花菜は、あーわかるー、と言って両手をぱんっ、と重ねた。


「付き合ってもないのに、からかわれたり、変に噂されたりして微妙な感じになるの、嫌だよね」


 うんうん、と花菜はニコニコして優しく微笑んでくる。


「ところで、一ノ瀬くんってさ、今カノジョとかいるのかな?」

「えっ、今どころか、ずっといないんじゃない?あいつ、女の子にモテたこと無さそうだし。あいつに彼女とか、想像もつかないわ」


 はんっ、と鼻を鳴らして笑ってみせると、花菜は人差し指の先を、その柔らかそうな唇に当てて、言った。


「じゃあさー、私、カノジョに立候補しよっかなー」





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