二人で買い物に出かければ友達ですか?(5)
上映が終わって、暗くなっていた館内に明かりが戻った。
和樹は、隣に座る天宮を見る。
「……ひっぐ……ぅう……っ……うぁ……」
感動して、ボロ泣きしてた。
まあ、気持ちはわかる、というか、俺もやばかった。
恥ずかしいから、なんとか泣かないように我慢したが、たぶん目が真っ赤に血走っているに違いない。
まあ、天宮はそれどころじゃなさそうだが。
「あ、天宮……大丈夫か?」
「ヒぅ……ぁ、うん。ごめ……私、ちょっと……化粧直してくるぅ……」
天宮は席を立ち、出入り口のほうへ吸い込まれていった。
俺も、顔洗っておくかな……。
――――――――――――――
二人並んで映画館を出る。
時刻は16時を過ぎたところだった。
このまま真っ直ぐバイト先に向かえば、ちょうどいい時間だ。
「はあー、やばい。めっちゃ泣いた」
「そうだなー、結構、感動し……えっ?」
和樹は天宮を引っ張って、すぐ隣の雑貨店に入り、姿を隠して映画館の出入り口のほうを見やる。
「ど、どうしたの、一ノ瀬?」
「……亮太がいる」
えっ、と驚いた様子の天宮を後ろにやって、もう一度確認した。
やっぱりいる、亮太と、彼女の中谷さんだ。
二人は手を繋いで、仲睦まじく笑い合いながら、駅の方向へ歩いていた。
どうやらあの二人も、たまたま同じ映画を観ていたようだ。
別に、何もやましいことはないので、隠れる必要はなかったのだが、成り行きとはいえ、天宮と二人きりで映画を観に来ていた姿を見られれば、まず間違いなく誤解されるし、面倒なことになる。
幸い、亮太たちは二人の世界に入ってしまっているのか、和樹たちに気づくことなく駅のほうへ姿を消した。
和樹は、ホッと胸を撫で下ろし、後ろにいる天宮へ視線を戻す。すると、天宮は顔を紅潮させて俯向きがちに、和樹を見ていた。
「あのさ……一ノ瀬……」
「えっ、なに?どうかした?」
「その、だから……手が……」
「手?」
見ると、和樹は右手でしっかりと天宮の手首の辺りを握りしめていた。
慌てて、パッと手を放す。
「わっ、ごめん!慌ててたから、その、つい……」
言いながら、和樹も顔を赤く染める。
さっきまで握りしめていた右手の平に、じわりと汗をかくのを感じた。
天宮は、和樹が掴んでいた手首をさすりながら、短く「別に……」と、視線を逸らしたまま呟いた。
沈黙が、場を満たす。
二人の間に流れる微妙な空気に、和樹が何も言えずにいると、天宮がおずおずと切り出した。
「一ノ瀬……時間、大丈夫なの?」
「あっ」
時計を見る、そろそろ駅に向かわないとまずい。
視線を戻すと、天宮と目が合った。
少し恥ずかしそうに笑う天宮に、自分も同じ顔を返す。
二人の間に、いつもの空気が流れた。
「帰ろっか」
そう言って、二人で駅に向かった。