宣言すれば友達ですか?(2)
六限目の教員と入れ替わりに、担任が教室に入ってきた。まもなくHRが始まる。
担任がプリントを配布する間に、ガサガサと生徒たちは帰宅の準備を始めていた。ふあっ、と欠伸を噛み殺しつつ、自分もそれに倣って鞄に荷物を詰めていく。
「――ん?」
机の引き出しから取り出した教科書やノートに混じって、見覚えのない封筒を見つけた。
パステルカラーの花柄に彩られた封筒だ。これってもしかしてという気持ちと、いやそんなまさかという気持ちが和樹の中でせめぎ合う。宛名も送り主の名前も書かれていないそれは、まるでラブレターのように見える。
いや。いやいやいや――ラブレターは無いなあ、なんて、否定してみるものの、心の内ではみるみるうちに期待が膨れ上がっていく。え、これって開けていいんだよねえ?と、誰に確認しているのか分からない独り言を心の中でつぶやく。
キョロキョロと周りの様子を伺うが、同級生たちは担任の話に耳を傾けており、誰も自分に注目している様子はない。誰にも見られないように、こっそりと鞄の中で封筒を開けてみる。中から現れた薄ピンク色の便箋には短く、「放課後、美術室に来て」とだけ書いてある。やや丸みを帯びた字体だが、それだけでは男が書いたか女が書いたかすら判別できそうにない。さて、どうしたものか。結果、ラブレターではなかったものの、女子からの呼び出しの可能性が、なくもない。純粋に、何か自分に用事があって呼び出している可能性は高いし、いたずらの可能性もあるが。
「いっちー、帰ろうぜ」
亮太の声に顔を上げる。どうやら考え込んでいるうちにHRはとっくに終わっていたらしい。
仁川亮太とは一年次から同じクラスの友人だ。小柄で色白、細く眠そうな目とやや出っ歯な風貌は、どこかネズミっぽい印象を与える。亮太は、自他ともに認めるアニメオタクであり、周りにそれを隠そうともしない奴だった。
「あー、亮太ごめん。今日ちょっとこの後用事があって。先に帰ってて」
「ふうん。もしかしてバイト?」
まあそんなところ、と言葉を濁すと、亮太は訝しげな表情をしたものの、それ以上は言及することはなく「みよちーん。いっちー、今日は先に帰っていいって」と三好に声をかけながら去っていった。
三好が、じゃあお先に、といった具合に手を挙げたので、こちらも返す。そのまま二人は教室を出ていった。
三好春馬は、一言でいえばイケメンだった。背も高く、整えられた髪はやや茶色がかっており、パッチリとした二重まぶたに大きな瞳。それでいて、重度のアニメオタクのようだ。二年次から同じクラスメイトとなって、亮太とアニメの話で意気投合して以来、自分を含めクラスでは三人で過ごすことが多い。
ガララ、と椅子を引いて自分も席を立つ。
結局、美術室に向かうことにした。いたずらの可能性もあるが、もし、自分に用がある誰かが待っているのだとすれば、待ちぼうけをくわせるのは忍びない。
それにまだ、淡い期待のほうの可能性も捨てきれなかったりする。