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友人契約  作者: マリーゴールド
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二人で買い物に出かければ友達ですか?(3)

 店を出て恵理がスマホで時刻を確認すると、ちょうど正午を過ぎたところだった。


「一ノ瀬、買いたかった物はこれで大体揃ったし、お昼どうする?なに食べたい?」

「そうだな。うーん、俺はなんでもいいけど」

「じゃあさ、モザイクに前から行ってみたかったパスタ屋さんあるから、そこにしない?私、奢るよ」

「えっ……パスタはいいけど、普通に割り勘でよくない?」

「ううん、荷物持ちであちこち振り回しちゃったし、お礼っていうか、そのくらいはさせてよ」

「んー……まあ、天宮がそういうなら」


 そうして恵理たちはモザイクを目指す。

 モザイクは、ショッピングモールから歩道橋で繋がっていて、海に臨む商業施設だ。

 映画館、レストラン街、商店街とこの場所のシンボルである観覧車なんかもある。

 恵理たちは、そのうちの一角にあるパスタ専門店に足を運んだ。

 ちょうど昼飯時ということもあり、並ぶかなと思っていたが、私たち学生は夏休みだが、社会的には平日なこともあったのか、思ってたよりもすんなり店に入ることができた。

 店員さんに案内されて席に着き、メニューを開いてギョッとする。

 値段に差はあるが、どれも千円以上、ドリンクも付ければ千五百円前後になりそうだ。

 奢ると言った手前、今更やっぱ割り勘で、とも言い出しにくい。

 母親から充分なお小遣いは貰っているとはいえ、一食に二人分で三千円の出費は、正直なところ痛手だ。

 二人とも店のおすすめのランチメニューを選んで、店員さんがメニューを下げる。

 氷水の入ったグラスに口を付け、窓の外に広がる港の景色を眺めていると、一ノ瀬が言葉をかけた。


「ねえ、天宮。やっぱ割り勘にしない?」

「えっ、でも……」

「あのさ、天宮。相手俺なんだし、余計な気遣わなくていいって。なんなら、サイゼリヤとかマクドナルドでもよかった訳だし。見栄張る必要なくない?」

「うっ……まあ、それは……」

「俺、バイトもしてるからこれくらい払えるし、天宮は親からお小遣い貰ってるんだろ?親御さんが稼いだお金なんだから、無駄遣いするのよくないって。そういうの、いつか彼氏とデートする時にでも取っておきなって」


 だったら、やっぱり今払うべきじゃん、って思ったけど、一ノ瀬の言うことももっともだ。っていうか、こいつ真面目かよ……まあ、真面目なんだけどさ。


「あはは……実はちょっと痛手かなあとは、思ってたんだよね。ごめん。じゃあ悪いんだけど、割り勘でお願いしていいかな」

「うんうん。無理しなくていいし」


 そう言われて、天宮はホッとする。

 そうだ、無理して格好つける必要なんてなかった。

 自分たちは、まだ高校生なんだ。

 大人のフリをするのは、大人になってからでいい。

 今日一日、デートらしいことしなきゃって、肩に力が入っていたけど、たぶん大事なことは、そういうことじゃない。

 普段、一ノ瀬といられるのは、帰り道の電車に揺られる数十分だけだ。

 それが、今日は半日くらい、ずっと一緒にいられる。

 好きなだけ、会話も出来る。

 その時間を愉しく過ごさないのは、勿体ないよね。


 運ばれてきたパスタは、値段に見合うだけの美味しさを詰め込まれていた。


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