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友人契約  作者: マリーゴールド
26/60

二人で買い物に出かければ友達ですか?(1)

 火曜日。


 待ち合わせ場所の神戸駅に着いた天宮恵理は、改札を出て辺りを見回す。

 スマホを確認すると、時刻は午前9時45分。

 約束の時間まで、まだ15分ある。

 一ノ瀬はまだ来ていないようだし、駅内にあるちょっとしたショッピングモールで時間を潰すことにした。

 今日も相変わらずのジリジリとした暑さに、汗をかきたくなかったので冷房の効いた店内で、展示商品のラインナップに目を通す。

 恵理は、黒のノースリーブにダボっとしたデニムパンツ、キャラメル色の底の浅いサンダルと麦わら帽子、ホワイトカラーのカゴバッグといった夏っぽいコーディネートで来ていた。

 スカートやワンピースも検討したが、今回はショッピングが目的なので、動きやすさ重視で選んでみた。

 一ノ瀬は、おそらくこれをデートだとは思っていないはずだ。

 二人で街に繰り出すこのお出かけが、デートになるか、ただのショッピングの荷物持ちになるかは、恵理の手腕にかかっていると言っても過言ではない。

 ファイト、私。

 再び時刻を確認すると、約束の時間の5分前。

 そろそろ一ノ瀬も来るはずだ。

 涼しかった店内を後にして、恵理は改札口へ向かった。



 改札口に戻ると、ちょうど駅構内から人が流れてきたところだった。

 その人混みの中に、一ノ瀬の姿を確認する。

 一ノ瀬もこちらに気づいたようで、小走りでこちらに近づいてきた。


「ごめん、もう来てると思わなくて。待たせたかな」

「ううん。私もさっき着いたとこ。思ってたより一本早い電車に乗っちゃったみたい」


 お決まりのやりとりを済ませて、改めて一ノ瀬を見る。

 一ノ瀬は、タオル生地みたいな、吸水性の良さそうなグレーのストライプTシャツに薄い緑色の麻のパンツと白のサンダルといったシンプルな格好をしていた。

 以前に、ウチに傘を返しに来た時にも思ったが、一ノ瀬の私服のセンスは意外と悪くない。

 変に大人ぶって背伸びした格好でもなければ、子供っぽいわけでもない。

 もっと、オタクっぽいごちゃごちゃした格好してると思っていたし、そしたら一緒に服屋を巡って似合う格好を選んでやろう、なんて考えていたのに。

 そしてなにより、一番の変化は――――


「ねえ、一ノ瀬。眼鏡、新しいのに変えたの?」

「えっ?ああ、これ?違うよ、これは家にいる時に使ってるやつで、いつものやつより、ちょっとだけ度が弱いんだ」


 一ノ瀬は、いつもの黒縁の眼鏡ではなく、メタルフレームのシャープな印象の眼鏡をかけていた。

 たったそれだけで、オタクっぽい印象がグッと減っていた。


「ふぅん。学校でも、それ使えばいいのに」

「あはは……元々そんなに視力低い訳じゃないし、日常生活には困らないんだけどね。特別教室とかだと、黒板までの距離があるから、板書の字が読めなかったりするんだ」

「えー、そっちの方がいいよ。似合ってるのに」

「えぇー……それ、妹にも言われるんだよね。そんなに駄目かなあ。一応、お気に入りのなんだけどな……」

「駄目ってことはないけどさ、なんか、オタクっぽいよ?」


 一ノ瀬は言われて、うーんと悩んだり沈んだりしていた。

 まあ、でも一ノ瀬のこんな姿を、私だけが知ってるというのは特別感あるし、他にライバルが増えても厄介だ。

 一ノ瀬は、今のままでいいのかもしれない。


「じゃあ、行こっか。とりあえず、ハーバーランドに」

「あ、うん」


 そうして二人は並んで歩き出した。



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