アドレス交換をすれば友達ですか?(4)
※思いのほか長くなったのでタイトル分けました。
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お風呂を上がり、ひとしきり支度を済ませて部屋でくつろいでいた天宮恵理は、目の前にあるスマホと、かれこれ一時間近くにらめっこしていた。
駅で「それじゃ、時間決まったら連絡してよ」と言った一ノ瀬と別れて、家路についた恵理は、お風呂に入る時以外は、片時も離すことなくスマホを握りしめていた。
「うーん……なんて送ればいいんだろ……」
初めて送るメールだ。
用件だけ送って済ますのは、さすがに味気なく思われるかもしれない。
これからよろしく、というのも今更すぎるし、おかしいよね。
かと言って、あまり馴れ馴れしいのも……。
時計をちらりと見ると、時刻は22時を回ろうとしていた。
明日の約束もあるし、あまり遅くなっては一ノ瀬に迷惑をかけてしまうかもしれない。
うーん、と悩んでいると手に持っていたスマホが震えた。
スマホの画面を開くとLINEのメッセージが届いている。
送り主は一ノ瀬で、メッセージには猫のイラストが「これからよろしくね」と言っているスタンプがひとつ、送られていた。
「プッ……あはは」
つい先程まったく同じことを送ろうか迷っていたため、可笑しくて声が出てしまった。
恵理は、すぐに「なにそれ、いまさら?(笑)」と返した。
すると、今度は猫がズーンと沈んでヘコんでいるスタンプを送ってきた。
どうやら一ノ瀬は、意外と絵文字やスタンプには抵抗がないらしい。
そうだ、用件を伝えなくてはいけない。
夕方にはアルバイトだと言っていたし、迷惑にならないよう早めに別れたほうがいいだろう。
昼頃までに買い物を済ませて、適当にランチして別れる、でいいかな。
どうせお店は10時頃から開店だし、約束は10時がいいだろう。
よし、と頷いて恵理は「明日は10時に神戸駅東口で」という一文と、「よろしくね」と犬のイラストが付いたスタンプを送った。
すぐに返ってきた「わかった」の文字を確認して、恵理はスマホを机に置いた。
明日はどんな格好で行こうか。
期待に、思わず顔がにやける恵理だった。