表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友人契約  作者: マリーゴールド
22/60

アドレス交換をすれば友達ですか?(2)

 ――――――――――――


 駅の改札口で亮太たちと別れてホームに向かう。

 階段を下りると、すでに天宮はいつものベンチに腰を下ろし、小さめの団扇で暑そうに扇いでいた。

 教室を出るときに、チラリと室内を見た時は、天宮はまだ友人らと談笑しているのを確認したのだが、どこかで追い抜かれたらしい。

 和樹は近づいて天宮に声をかけた。


「おつかれさん」

「あ、一ノ瀬、おつかれー」


 天宮がトントンと隣の椅子を叩くので、そこに座った。


「夏休みだね。一ノ瀬は、なんか予定立ててんの?」

「いや、特には――――バイトと、夏期講習くらい、かなあ。天宮は?」

「私は由紀たちとプール行って、BBQと、あと、お盆は毎年おばあちゃんの家に遊びに行くし、今年も多分行くかなあ」


 さすが、リア充の夏は忙しいな。

 というか、自分が予定なさすぎるだけのような気もするが。

 そういえば、天宮は彼氏いないのかな。

 なんとなく、いないつもりでいたが、確かめたことはない。こうして二人で帰ったり、部屋の中まで招かれたりしているので、いないだろうとは思うのだが、リア充の思考は、たまに和樹の常識を凌駕するのでいないとは言い切れない。

 それに、天宮は自分のことを異性として数えていない可能性がある。

 そう考えれば、彼氏がいたとしても、これまでの行動に一応は納得もできる。

 だけど、もし、自分が彼氏だったら、クラスメイトとはいえ、見知らぬ男と二人きりで下校したり、彼女の部屋で一緒に過ごしたりはして欲しくない。

 うん、やはり、一度確認しておいた方がいい。その上で、彼氏がいるというのなら、もっと節度を持って自分と距離を保つべきだと、注意してやらねばならないだろう。


「ねえ、天宮」

「ん?なーに?」

「天宮って、彼氏いるの?」

「へっ?!な、なんで?」


 天宮は予想外の質問に動揺している様子だ。


「いや……そういえば、そういう話はしたことなかったなと、思って。それで、どうなの?」

「いや、まあ、今は、その……いないけど」


 天宮は、なぜか顔を赤らめて、ちらちらと視線を送ってくる。


「なんで、一ノ瀬は、そんなこと、気になったの?」


 天宮の様子に、和樹は自分も顔に熱を帯び始めていることに気づいた。


「なんで、って言われても……あ、ほら、亮太も三好も彼女いてさ、夏休みはどこ遊びに行くとかって話してたから。天宮は、そういうのないのかなって……」

「ふぅん……そっか……」


 そう言ったきり、天宮はスマホに目を落とし、いつもの仏頂面で黙り込んだ。

 自分は、そんなに変な質問をしただろうか。

 よくよく考えて、はたと気づく。

 異性に付き合っている人がいるかどうかを聞く、という行為は、あなたのことが気になっています、と言っているようにも受けて取れるということだ。

 もしかして、天宮は和樹が告白でもしてくるんじゃないかって、緊張して顔を強張らせていたのかもしれない。

 それは誤解だ。

 しかし、今更そんな弁明してみせても、かえって怪しまれるに違いない。

 こんなことで、天宮の信用を失うのは本意ではない。

 以後、言動には気をつけようと心に誓う、和樹だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ