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友人契約  作者: マリーゴールド
19/60

きっかけがあれば友達になれますか?(1)

 ――――――――――――


 天宮恵理は、お気に入りのクッションを抱えて、ベッドに三角座りをしていた。

 視線の先には、夕方頃に突然現れた来客者が座っていた座布団が置かれたままになっている。

 手を伸ばし、棚に置かれたリングケースを取る。蓋をあけると、中に入っているのは、自分の通った学校とは別の、中学の校章だった。


「……やっぱりあいつ、覚えてなかった」


 それはもう、一年以上も前の話になる。

 中学三年の冬、二月。

 公立高校を受験して、試験を終えた帰り道。

 駅に着いたあたりから、周りの人たちの視線が気になり始めた。普段から、特に男性には不躾な視線を送られてジロジロと見られることはあったが、その日は特に多かった。電車に乗ってからも、やたら視線が私に集まっている気がした。私のほうを見て、くすくす笑う女子がいて、やはり、これはおかしいんじゃないかと思った。摩耶駅で、電車を降りた時、ようやく異変に気づいた。スカートがお尻の辺りから裾までスッパリと切れていた。歩くとその切れ込みから真っ白な布地がチラチラと見え隠れしていたのだ。

 カァっと、羞恥に顔を赤く染めて、思わずその場にしゃがみ込んでしまった。

 どうして誰も教えてくれないんだろう。きっと大勢の人に見られたはずだ。泣き出しそうになった私の前に、同じくらいの年の男の子が立っていた。

 その人は、真っ赤になった顔を背けて、手を差し出した。


「あの、これ、使ってください。応急処置くらいにはなると思うから」


 そう言って出された手の平には、中学の校章が乗せられていた。

 私はすがる気持ちでそれを受け取り、安全ピン代わりに破けたスカートを校章でとめた。

 ありがとう、とお礼を言おうとしたら、その男の子はさっさと行ってしまっていた。

 きっとあの子は、私と同じように今日受験した学生だと思った。

 私はとても感謝をしていたので、なんとかしてその校章の持ち主を探してお礼がしたいと思い、その校章が鷹尾中学校のものであることを突き止め、すぐに問い合わせてみたのだけど、三年生は卒業してもう登校しないという旨を伝えられ、また、校章から生徒を特定するのは困難だと教えられた。

 その後も摩耶駅に何度か足を運んだ。しかし、結局その男の子は見つからなかった。





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