家族公認なら友達ですか?(1)
――――――――――――
「あづい……」
炎天とは昔の人は上手いことを言う、七月に入り熱気は日に日に激しくなって、うだるような暑さが押し寄せていた。
先週まではカーディガンを羽織る生徒もちらほら見られたが、さすがに登校する生徒の姿は半袖ポロシャツの夏仕様に変わっていた。
「あづい……」
「亮太、さっきからうるさい。言われると余計に暑くなるだろ……」
「だって、暑いもんは暑いんだもん!こんな暑い中でテストとか、もう意味わかんねーし!」
自分たちの通う向洋高校は前期後期制の学校のため、夏休み前のこの時期に前期中間考査がある。
三学期制の他校の生徒には試験が少なくて羨ましいなどと言われることもあるが、実際は試験範囲も広くなるし、一回の試験の重要性も上がるため、やってるほうは結構大変だったりする。
「まあ、なに言ったって今週は中間考査だから。お互いがんばろーぜ……」
「クソぉ、優等生は余裕じゃん……」
亮太は団扇であおぎながら、あちーあちーと悪態をついていた。
自分は、別に優等生と言われるほど成績がいいわけでもないが、亮太は試験の前の日でも深夜アニメを欠かさずチェックしてるようで、毎回あまり成績は芳しくないようだった。
「だぁぁ……あづいよぉ……なんで教室にはクーラーないんだろうなあ……。職員室ばっかりズルいわー」
「まあな、公立高校もそろそろ環境に合わせて冷房くらいは設置してほしいよな」
地球の温暖化が関係してるのか知らないが、年々、夏の最高気温は更新してるような気がする。
まあ、どうせ熱中症で倒れる生徒が多発でもしない限り何も変わらないんだろうなあ、と一ノ瀬は諦めの境地に至っていた。
「おはよー、和樹、亮太」
「おーす、みよちん。相変わらず涼しげな顔してんなあ。ちゃんと温度感じてんのかー?」
三好が挨拶しながら合流する。三好は暑そうにしながらも汗ひとつかいておらず涼しげな顔をしている。
「いやあ、さすがに暑いですよ。体質であまり汗をかかないだけです」
なんか、イケメンが涼しげな顔で立ってるってだけで体感温度が2℃ほど下がったような気になる。美男美女ってのは、ただそこに存在するだけで役に立つもんなんだなあ。
「そういえば、二人は夏期講習は申し込むんですか?」
「あー、あったなぁ、そんなの。俺は強制参加かなあ」
夏期講習は、夏休み中に学校で行われる前期授業の復習で、この中間考査の成績不振者は強制参加、その他にも希望すれば参加可能となっている。
「僕は、この夏休みはアルバイトに挑戦しようと思ってますので、不参加ですね。和樹は?」
三好に促されてちょっと悩む。
「うーん、この試験の成績次第かなぁ」
「んだよぉ、そしたら受けるの俺だけじゃん!いっちー、俺ら仲間だろ?ひとりにしないでぇ」
亮太が大袈裟に嘆願してくるが、無視だ無視。
まあ、正直言って夏休みは特に予定もなく、暇なので参加してもいいかと思っていた。
ただ、この炎天下を歩いて学校に通うのかと思うと、気持ちに歯止めがかからなくもない。
「まあ、考えとくよ……」
今はまず、目の前のテストだ。