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友人契約  作者: マリーゴールド
11/60

相合い傘をすれば友達ですか?(2)

 ――――――――――――


 週が明けて、月曜日。放課後、曇天。

 今朝は薄く雲がかかっていただけだったのに、昼過ぎ頃から雲行きが怪しくなってきた。

 六月も終わりが近いが、梅雨明けは未だ遠そうだ。

 和樹は、風紀委員に所属している為、不定期だが月に一度くらいの報告会があり、今日はその集いに参加していた。簡単な連絡事項と、来月の活動について風紀委員長から報告され、一時間程で解散した。


 校門を出る。紫陽花が薄いピンクやブルーの花を咲かせようとしている。どんより濃灰色の雲が厚く空を埋め尽くしていた。急がないと降られそうだ。

 今朝は天候も悪くなかった為、油断して傘を持って来ていなかった。急ぎ足で駅に向かう。改札を抜けてホームへ階段を下りようとしたところで、今日が月曜日だったことを思い出した。

 さすがに居ないだろうと思った。今日は委員会の集まりでいつもより一時間近く遅い。だから、階段を下りてホームに立った時、どきりとした。


 ――天宮がいる。


 なんで……いや、きっと友達としゃべってて遅くなったとか、なにか用事があってたまたまこの時間になってしまったとか、可能性はいくつもある。

 だけど――。

 もしかして、もしかすると、自分を待ってる、その可能性もあるのではないか。

 ベンチに座る天宮の方へ歩く。天宮が、こちらに気づいて顔を上げた。目が合った時、一瞬、微笑んでくれたような気がした。けれど、すぐにいつもの仏頂面に変わっていた。


「遅かったじゃん、一ノ瀬」


 そう言うと天宮は、隣の席に置いてあった鞄を手に取り、そこへ座るよう促した。


「ああ、今日は委員会の集まりあってさ」


 席に座りながら答える。「風紀委員だっけ?」と天宮が尋ねてきたので、適当に相槌を打ちつつ、会話に答えた。

 遅かった、ということは、やはり天宮は自分のことを待っていたらしい。もしかすると、これまでの金曜や月曜の帰りも、天宮はここで自分が来るのを待っていたのかもしれない。

「もしかして待ってたの?」なんて聞けば、天宮はきっと否定するし、もうここで待っていてくれることもなくなるかもしれない。

 アナウンスと共に、電車がホームに入る。

 いつものように、並んでシートに座る。


 真実なんて、どちらでもよかった。自分は、ほんの数回だが天宮と並んで帰るこの時間を心地よく感じていた。そして、天宮も、和樹と同じように感じてくれているのかもしれない。そのことが、なんだかやけに嬉しかった。


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