ネタは間に合ってますか?
俺の実家はクソ暑すぎる以外には問題のない平和な町にある。
駅前はそれなりに賑わい、住宅地の家々も平均的で、小さな事件は起こるが世間を賑わすような大事件は起こらない。
平和で平凡で平坦な日々を送っている。
それだけに日々の変化に敏感で、特に奥様方は情報収集に余念がない。
「〇〇さんの娘さんが妊娠した」「××さんの飼い犬が逃げた」「△△さんの旦那が病気らしい」
見た目年齢75歳以上のマダム3人で構成される、通称『番茶会』
俺は、いつも三差路に集まって井戸端会議をしている彼女らにフォーカスされてしまったらしい。
因みに『番茶会』とは俺の命名。
名前なんて知らないし、『いつも井戸端してるばっちゃん達』では長い。
それで、ばあちゃん、ばっちゃん、ばっちゃ、番茶会。
因みにあだ名もつけている。
メンバー1.お豹さん いつも何かしらヒョウ柄の物を身に着けている
メンバー2.クリリンさん なぜかいつもむき栗を持ってきている
メンバー3.カートさん 3人の中で一番笑い声が大きく、いつもシルバーカーを押している
誰に話す事もないのだが、数度すれ違ってからというもの番茶会の視線が厳しい。
夕方に行くタケシの散歩コースで遭遇してしまう事が多いため、散歩コースを変更しようとしたがタケシが許してくれず、その固い意志は高級ジャーキーでも揺るがなかった。
番茶会員たちは俺を見るたびに、何やらヒソヒソ会話している。
いや、・・・・露骨すぎだろ。
内心で呆れつつ、いつものように会釈だけして通り過ぎる。はずだった。
「あの~、もしかして、田中さん家の圭介くん?」
突然お豹さんが話しかけてきた。
こうなっては無視するわけにはいかない。
「そうですけど・・・どちらさまで」
「あー!やっぱり~!」
「だから言ったじゃない!」
確認ができて満足したのか俺を残して盛り上がる3人。
番茶会だけに、番茶急須(万事休す)なんて言ってる場合じゃない。
「あ、圭くん栗でも食べる?」
だからなんで栗推し!?
静かな住宅地の三差路に三人の声が響き、タケシはリードを引っ張って先を急かす。
今日の番茶会の一面は決まった。
「田中さん家の圭くんが帰ってきた。」