第1話:空色の太陽
非日常には慣れっこだった。
いつの間にか、俺はその力を使いこなせていた。
それは呼吸をするに等しいくらい容易く、俺はその非日常を使いこなせていた。
俺自身のことなんか何一つよくわからなくたって、その力は間違いなく俺だけのものだった。
人の目に俺は映らない。
人の関心は俺に向かない。
その力を使っている時だけは『透明』だった。
何のための力なのかはわからなかった。
使い所なんてそうなかった。
家にいたって俺は人の目につかなかったし、外に出ても他人はそう簡単に他人に関心なんか向けない。
そう、持て余していた。
そんなある日だった。
それは突然の出会いだった。
何気ない平日の何気ない帰り道。
夏休みの補習は午前中までで、その道のりは茹だるように暑い。
いつもと変わらない夏の暑さに肌を焼く太陽。
何一つ、変わらない、ただの日常だった。
不意に視界に入るふたつの空色。
酷く綺麗なその空色に、目を奪われる。
非日常なんて求めていないのに。
俺は俺であるために、『普通』でなければならないのに。
そこで自分の思考に疑問を抱く。
何故そうあらねばならないと思ったのか。
あぁ、頭が痛い。
それでも俺の足は自然と空色を追いかける。
それは当たり前のように、運命だと言うように。
空色の太陽は、笑っていたような気がした。