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第11話:助言

いつも笑っているこの人たちに闇を感じることはなかった。

だってこの人たちは何でもできるから。

でももしかしたら。

()()()()()()()()()()こそ、苦しんでいるのかもしれないと思った。


だから深く聞けなかった。


もし俺が、同じ場所に立てた時に、それでも暴かなければならないなら、その時聞こう。

そうでなければならないと、思ったんだ。





叶恋さんと別れてひたすら進む。

陽炎サンが道を別っているからその後を追って、だ。

そして薄暗い廊下の先の階段の前で、止まった。


「燕クン、実地研修だ。

 …君はどちらに進むかい?」


一方は階段を上った先。

もう一方は地下へと下る階段。

その二択を迫られれば、何となく、感じたことを告げる。


「…上は、あんまり行きたくないっすね…。」


何となく。

そんなあやふやな理由だが、上は嫌な感じがする。


「…正解だ。

 僕は先に上に行く。

 君は氷雨くんと下を探しておくれ。」


陽炎サンはそれから上にくるようにとそういって階段を上ろうとする。


「1人で大丈夫なんすか?」


そう聞けば何言ってんの見たいな表情で振り返られた。


「あら、私は頭数に入れてくれないのかしら?」


そこには先程別れたばかりのはずの叶恋さんがいた。


「か、かか、叶恋さん!?

 あー…早いっすね…?」


それも無傷で汚れることもなくそこに居るのだ。

やはりこの人トンデモ能力だぜ…と再確認する。


それに、あの恐ろしい気配もまるで感じさせない。

いつも通りすぎて、逆に違和感を感じる。


…いや、違うな。


彼女なりに何かがあったのだろう、いつもよりもどこか穏やかに感じられる。


「私たちは上で待っているわ。

 燕くんには、なるべく早く上がってきてほしいわね。」


そう言って叶恋さんは階段を上り始めた陽炎サンの後を追っていく。

彼女がそういうのなら、きっとそれは必要なことなんだろう。


「わかりました。

 小春も見つけて、必ず。」


そう返せば叶恋さんは笑った気がした。






俺は今度は氷雨サンの後をひたすら追う。


「氷雨サン…迷いなく進んでますけど道わかるんすか?」


「ああ、人のいる方向を目指すだけだからな。」


なるほど。

そういう使い方もあるのか。

人の思考を読み取る能力をその対象の方向を知ることに使う。

訓練に付き合ってもらったあの日、透明になったはずの俺をじっと見ていたように。


俺も考えなければならない。

能力の応用を。


以前から引っかかることはある。

あの人たちは決まってこういうんだ。


"消えるのではない。"

"認識から外れるのだ。"と。


それがヒントであると思いいたるのは早かった。

でもその先が、わからない。


相手の認識から…意識から…?

なんだかしっくりこない。

そう悩んでいると「ヒントをやろうか?」と言われた。


「くれるんすか?」


意外だった。

以前叶恋さんが教えないのならその時ではないと教えてくれなかったこの人のことだ。

自発的に教えてくれるとは、思いもしなかった。


「…気まぐれだとでも思え。

 そこから気付くのはお前次第なのだから、問題ない。」


こちらをちらりとも見ずに言われる。


「お前、夢を見るだろう。」


「夢…っすか?」


そりゃ眠れば誰だって見るはずだ。

そう思ったが心当たりがあった。


あの不思議な夢を指しているんだと。


この人たちと出会って見るようになった、記憶の片隅に消えていくような夢。

まるで誰かの記憶のような、夢。

そして、小春の行方を暗示するような、夢。


「あれは事実、お前の能力で視たものだ。」


それが己の能力だとして何を意味するのか。


『君は己の能力を理解している?』


突如、叶恋さんが問いかけてきた言葉を思い出す。


「俺は、俺の能力を理解していない…。」


そんなまさか、と思う。

物心つく頃からそこにあった"非日常"という名の俺の"日常"だ。

ずっと、俺に纏わりついていた、そんな"非日常"を。


それが能力の側面でしかなかったら?


そう悩んでいるうちに目的地に着いたようで。


「さて、とりあえずそこまでだ。

 今はそれは無駄な思考でしかない。」


この人は…このタイミングでヒントを与えといてぬけぬけと。


「小春を助けるのだろう?」


いつも通りの無表情で赤い目を向けて氷雨サンは言う。


あぁ、そうさ。

そのために来たのだから。

何が待ち構えているかはわからない。

だから今は、目の前のことに集中しなければならないのだと、言い聞かせた。


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