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伝記1:現人神と呼ばれた少年の話

読まなくても支障はないちょっとした昔ばなしです。

昔々、そんな存在があった、ただそれだけの。

それはいつ頃の話なのか。

もうそれを知っているものはどこにもいない。


ハジマリは突然だった。

小さな集落で子供が生まれた。

ただ、それだけのはずだった。


幼いころ、まだそれは何もわかっていないただの子供だった。

だが、自然に教えられた。

何も見えないそこに水があること。

ただの土に鉱物があること。

そんな些細なことを世界が教えていた。


それは次第に大きくなって、木は水によって育まれ、木によって火が大きくなる。

火が燃えればそれは灰となり土へ還り、土は鉱物を生み出す。

その鉱物の表面に水が生じて、水はまた、木を育む。

それは世界の理であり、世の移り変わりであり、事象を表すものごとだった。


物心つく頃にはそれを理解し、その力を発現させた。

それが原初の能力者の始まりだった。


最初はただ困っている人がいたから助けただけだった。

農具が壊れていたり、家の修繕が必要だったり、厳しい寒さを生き残るためだったりと理由はたくさんあった。

少年はそれが特別な能力と知らなかったのだ。


次第に人は少年を現人神と呼び、崇め、敬い、そして畏怖するようになった。

少年は孤独になった。


人というのは勝手なもので少年に無理難題を押し付けることもあった。

勝手に崇め、勝手に恐れ、勝手に貶すのだった。


そんな彼が成長する間、一人の少女と出会った。

彼女は世話役を言いつけられた集落の娘だった。

彼女は彼を、一人の人として扱い、接した。

そのぬくもりが、彼を救っていたのだった。


時は流れ、彼らの間に子ができた。

その子供もまた、能力を持った子供だった。

能力は、受け継がれるものだったのだ。


彼は嘆いた。

悲しい思いをするのは自分の代だけでいいじゃないかと。

彼は祈った。

どうか、我が子孫の力が衰えるように、と。


彼らが集落を離れたのはそれからだった。

一か所に集まるのではなく、散り散りに在ろうと思ったのだった。


だから、だれも原初の始まりを知らない。

その血は世界に散らばっているのだから。







そして現代。

彼の血を引くものの能力は彼の望み通り弱まった。

万物の事象を司る能力は分けられ、それぞれに宿った。


そして彼ら自身も、別々の道を歩もうとしていたのだった。

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