俺、惨め
今日は1話です!
修学旅行約十日前、五月一日。
今日は日曜ということもあり、学校は休み。
家でゆっくりアニメでも見よう、そんなことを考えつつ布団に横になっていた。
しかしその考えは部屋のなかに鳴り響いたインターホンの音で無駄になる。
滅多に来客が来ないこの家のインターホンがなった時点で嫌な予感はしていた。
しかし玄関を開き目の前にいたのは予想だにしなかった人だった。
「河合正孝様の家でお間違いないでしょうか?」
黒いサングラスをかけ、黒いスーツをキッチリと着用、どこのMIBですか?と聞きたくなる風貌の男性が立っている。
「あの、どちら様ですか……?」
「私、ダイダロス社、イカロス型アンドロイド専属研究員の村中と申します。 今日伺ったのは、河合正孝様の修学旅行の件についてです」
イカロス型アンドロイドと言えば桜井のことだ。
ダイダロス社、一度も聞いたことのない会社だが、そんな会社が修学旅行のことについて俺に何の用事なのだろうか。
「我々ダイダロス社はイカロス型アンドロイド、桜井葉月の要請で貴方が望むなら修学旅行にかかる費用をダイダロス社が受け持つことに決定しました」
「ちょっと待ってください、何でそんな会社が俺個人の修学旅行の費用なんて・・・・・・」
「我々ダイダロス社はアンドロイドが決めた学ぶ相手に対し相手が望むなら援助をすることになっています。 少々貴方の身辺調査をしましたが、両親に難ありとの結果が出ており、私個人の意見としましても貴方に援助することは問題ないかと思います」
身辺調査、確かにする必要があるのかもしれない。
しかし身辺調査をされ家庭の事情に首を突っ込まれ、尚且つ修学旅行の費用をその会社が受け持つなんて誰が喜ぶのだろうか、普通の人は喜んでこの提案に乗るのだろうか。
「お断りします。 自分が行きたいなら自分が働いて費用を稼げばよかっただけです。 見ず知らずの貴方達に費用を出してもらうほど、俺は落ちぶれてません」
何か言おうとしていた村中という人を閉めだすように玄関を勢いよく閉める。
こんなに自分が惨めだと思ったのは初めてだ。
***
夕方、予想していた通り桜井が家に訪ねてきた。
桜井は何かに怯えるように下を向き顔を合わせない。
「迷惑だったでしょうか・・・・・・」
「迷惑だったか聞くなら何で相談してから行動しなかったんだ」
「研究員の方に相談したらどんどん話が進んでしまって・・・・・・」
「俺は元から修学旅行に行きたくないから費用を積み立てしてなかったんだ。 行けないのは自分のせい、だからこそ知らない人に費用を出してもらってまで修学旅行には行かない」
そう言うと桜井は何か思いついたように、顔を上げ俺に聞いてくる。
「知らない人から費用を出されることが嫌なんですか?」
「知らない人から旅行の費用出されたら嫌だよな、自分のせいでいけないだけなのに」
「わかりました!」
なにか決心したように玄関から飛び出す桜井。
嫌な予感しかしないが今更止めれる距離に桜井はいない。
次会った時にでも何をしようとしてるのか聞き出そう、そんなことを思っていた。
しかし桜井と修学旅行前日まで一度も会うことはなく、桜井に対する連絡手段がない俺は何も聞けないまま修学旅行当日を迎えるのだった。
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