俺、友達ができる
本日4話目!
あと一話でラストです!
午前の授業が終わり昼休み、相変わらず囲まれている転校生。
朝から毎時間囲んでよく飽きないものだ。
それよりも、問題が一つある、目の前に弁当箱を持った白石美雪が立っているのだ。
クラスメイト達は、転校生を囲みながらもこちらの様子を気にしてチラチラと視線を向けている。
「なにか用ですか?」
睨みながら言うが、気にしてないのかニコニコと笑顔でこちらを見ている。
「一緒にお昼ご飯を食べましょう」
周りの者たちは信じられないものを見るような目つきでこちらを見ているが、当の本人は気にせず俺の前の席に座り弁当箱を机に置く。
「俺は一緒に食べるなんて言ってませんが」
「そんなの知らないわ。 私が一緒に食べたいの、それに私たち友達でしょ?」
こいつ外堀を無理矢理埋めようとしてやがる!
「それに私、友達河合君以外いないのよ。 一人でご飯なんて寂しいわ」
本当にこいついい性格してるわ・・・・・・。
遠回しにいつも周りにいる人は友達じゃないと言ってるようなものだ。
そんなことを本人たちがいる時に言えばどうなるかなんてわかっているはずなのに。
現にいつも周りにる人たちは信じられない、そういった表情になっているし、一部の者は俺を睨んでいる。
「私、人気者に縋りつく人嫌いなの。 そんな人友達じゃないわ」
屋上で聞いたことを、あえて教室で話す理由はなんだ。
この二年間そういう発言をしなかったのに今になってそうする理由。
『私、今の状況嫌なのよ。 河合君が友達になってくれさえすればどうでもいいわ』
俺にだけ聞こえる声で言うと、机に置いていた弁当箱を開き食べ始める。
一緒に食べるなんて言ってないんだが仕方ない。
家から持ってきたパンを鞄から取り出し食べ始める、
「今日は特別だ、今一人になったら襲われそうだし」
「特別だなんて言わず毎日食べましょう。 それよりさっきの話の続きなんだけど」
そう言って白石が話し始めようとした瞬間、俺の食べていたパンを取り上げゴミ箱に放り投げるやつが現れた。
「キモオタ、白石さんに何しやがったんだ? どうせ弱みでも握って脅してるんだろうけどな。 そうだろ?」
一人になったら何かされるとは思っていたが、まさか白石の目の前で行動に移すとは予想していなかった。
俺のパンを放り投げた高橋は、俺の胸倉を掴み無理矢理、席から立ちあげさせ、睨む。
「キモオタが白石さんと友達とかないわ。 もっとブスが相手なら何もなかったんだろうけどな、さすがに白石さんを脅すのは許せねーわ」
そういえば高橋は白石のことが好きって聞いたことあるな、だから勘違いして暴走してるのか。
「ちょっと! 河合君は脅してなんかいないわ!」
白石のその対応は高橋に対して逆効果だ。
その対応すら脅されてるからと思い込み、高橋の怒りは強くなる。
「キモオタぁ・・・・・・。 覚悟は出来てるんだろうな?」
高橋はそう言うと胸倉を掴んでいる反対の手で殴ろうと構える、しかし殴る寸前、白石が俺と高橋の間に割り込み、そのまま白石が殴られ、その勢いで近くにあった机を巻き込み倒れる。
教室は白石が派手に倒れたことで女子は悲鳴を上げ男子は固まってしまう。
殴った本人は白石が割り込んだこと、そして自分が殴ってしまったことに頭の処理が完全に止まってしまいその場に立ち尽くしている。
「河合君大丈夫かしら・・・・・・?」
机にぶつけて切ったのか、瞼から血を流す白石。
「お前なんで・・・・・・。 そんなことより保健室行くぞ!」
俺は立つのすらつらそうな白石に肩を貸し教室から急いで保健室に向かう。
そして保健室につくと、そこにいた養護教諭に白石の状態を見てもらう。
「あちゃあ、結構深く切ってるね。 縫わなくても大丈夫だけど、傷が残るかも」
傷が残る・・・・・・。
俺のせいだ、白石が関わってきても俺が無視して関わらなければよかったのだ。
「女の子の顔に傷をつけるなんて最低だね! 君じゃないでしょうね?」
養護教諭が眉を吊り上げ聞いてくるが、俺は答えられない。
「先生、彼がこれをしたわけじゃないですよ。 彼は、私を保健室に連れてきてくれただけです」
「そうなの? それにしても、女の子の顔に傷を作って結婚相手が見つからなかったらどうするの! 先生があなたを傷つけた子に説教してあげる!」
「もしこの傷で結婚相手が見つからなかったら、そこにいる彼に結婚してもらうので大丈夫ですよ」
それを聞いた養護教諭は、ニヤニヤしながら俺と白石の顔を見る。
そういう関係に見られたようだ」。
「河合君、さっきから何でそんなにテンション低いの? さっきの結婚の話だって君ならそれは無理、とか言ってもおかしくないと思うのだけど」
「いや、その傷俺のせいだから・・・・・・。 俺が白石に関わられても無視して関わらなければそんな目に・・・・・・」
「たぶん、河合君が無視しても結果は変わらなかった気がするなー。 私言ったでしょ、君とお友達になりたいと。 だから無視されて逃げられても追いかけてたと思うし」
「なんだよそれ・・・・・・。 無視しても追いかけてくるとか、そこまでして俺なんかに」
話していると養護教諭は気を利かせたのか、保健室から出ていき部屋には俺と白石の二人だけになる。
「さっきの話の続きね、昨日君が虐められてるのを見た、そしてその後君が屋上から飛び降りるのも見た。 急いで君が落ちた場所を見に行ったけどそこに君はいなかった。見間違いじゃないのに君はいない、めっちゃ気になるよね! そんな風に思っても君と関わったことないし、話したこともないからさ、なら友達になればいいんだって、そう思ったけど安直過ぎたのかな?」
安直と言えば安直、しかし普通は気味悪がって近づかないと思う。
現に俺だったら近づかないし、ましてや友達になろうなんて思わない。
「んー。少し卑怯かもしれないけど、この怪我君が気にしてるなら私の言うこと一つ聞いてくれない?」
「予想は出来るけど、何?」
「私と友達になってください。 またさっきみたいに、絡まれたりするかもしれないけど、私は気にしないし君も気にしないで友達として仲良くしてほしいの」
カーストトップの白石と友達になったら確実に絡まれると思う。
けどそれを承知で友達に。
「カースト最下位の俺でよければ・・・・・・」
ぎこちなく手を前に出すと、嬉しそうに俺の手を握り返し振り回す白石、そんなに友達ができて嬉しいのか、しかしそういう自分も友達が出来たことに内心喜んでいるのか口元の緩みが全く抑えられない。
二人で手を握りにやけている光景は養護教諭が戻ってくるまで続き、戻ってきた養護教諭に顔が真っ赤になるほどからかわれたのは言うまでもない。
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