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呪われた家族

作者: 神名代洸

そこに越して来なければこんなことにはならなかっただろう。

借家ということではあったが、物件的には問題ないはずだった。それを知るまでは…。

借家に入って1日目、深夜に誰かに起こされたような気がした。

時間は1時半。

だが家族は皆眠っていた。

布団を直し、入り直して首まですっぽりと入った。ヌクヌクとしててあったかい。

うつらうつらした時耳元で囁く声が聞こえた…。

翌朝、よく眠れなくてあくびをしていた。

「うわあ〜あっ。ムニャムニャ。眠いなぁ〜。」

「なんだ、寝られなかったの?」「うん、夜中に目が覚めちゃって…。」「寝る場所が変わって寝られなくなった、とか?」「そんなことはない。普通に寝られるよ。」「じゃあ大丈夫だね〜。」


2日目、今日は早めに布団に入ることにした。

深夜1時半、また目が覚めた。

誰かに頬を触られた感触があった。だが枕元には私以外誰もいない。気のせいだろうとあまり深く考えずにいたが、やはり気になった。次の日も同じだったら起きていようと考えていた。

そして翌日の夜、早めに就寝し、深夜に備えた。やはり1時半に目が覚めた。

眠い目をこすりながらもなんとか目を覚まそうとブラックコーヒーを飲んでみる。そして部屋の電気をつけた。が、途端に電気が消えた。ん?と不思議に思ったが再度スイッチを押して電源を入れる。

今度はちゃんとついた。

気のせいだったのかと思ったが、もしかしてこの部屋出るのかも…なんて頭の片隅でちらりと考えた。

これで三日連続となる。

四日目は考えたくなかったので考えず、不動屋さんへ向かった。仲介してくれた不動産屋は親切丁寧な応対だったが、肝心なことはぐらかされたような感じがした。


「どうなんですか?はっきり教えてくださいよ。」

「そうは言われましても…。」

知らないの一点張りだ。

仕方がないので諦めたが、やはり気になる。

家族は誰一人として信じてはいないようだったが、ある日の夜、遅くまで勉強していた息子が誰かに見られているような視線を感じた。試験勉強中ということもあってあまり他に気をかけられない。母親に言って夜食を作ってもらった。時間は深夜1時過ぎ…、眠くなって来る頃ガタッという音を聞いた。

今は自分しか起きていないはずなのになぜそんな音が出たのか気になって音がする方へと歩いていった。

何にもない応接室だった。

音がなるようなものはどこにもない。

その時すぐ後ろに人の気配を感じた。

てっきり母親が起きてきたのかと思ったら黒い塊がヌッと立っていた。

あまりの恐怖に我を忘れた息子は「うわっ!」と叫んだ。

その声にいち早く反応したのは私だった。すぐに息子の所へと走っていった私はガタガタと震えている息子を抱きしめた。

「お父さんがいるからな。大丈夫だ。」

息子は少し気持ちが落ち着いたのか震えは収まっていた。とりあえず水を一杯飲ませ、完全に落ち着いたところで話を聞いてみることに。その頃になって母親も何事かと起きてきた。

「あれは絶対幽霊だって。だって真っ黒の塊だったんだよ?」

「見間違いじゃないの?」

「そんなわけない。」

「そうか、やっぱり出たか…。」「って、父さん知ってたの?」「ああ、父さんも何度か起こされた。」「やだよ、こんなところ、別のところに引っ越そうよ。」「それは無理だよ。まだ越してきたばかりじゃないか。」「そうだけど…。」

どうやらもう一人では寝られないようだ。仕方がないので私が一緒に寝ることになった。

今息子は私の側で勉強している。私はなるたけ起きているようにした。また同じことが起きないとも限らないからだ。時計は深夜1時過ぎ。霊の出るのは大体1時半頃なので息子の勉強の邪魔にならないように部屋の周りを眺めてみた。特に変わったところもない。一安心だ。と、その時ガタッと音がした。息子は怯えている。

何かの時のためにと懐中電灯やライターも手に持っていた。当然息子にも渡してある。

「とうさんちょっと見てくるな。」「え〜、行っちゃうの?」「大丈夫だ。5分で戻るから。」そう言って母さんのいる部屋へと向かう。母さんは娘と一緒に眠っているはずだ。

そう思っていたのに2人共起きていたようだ。真っ青な顔をしている。

「おい、どうした?」「あなた、…出たわ。あの子の言ってたのは本当だったのね。」「出たのか?本当に。」「うん、でた。怖いよー、パパ。」

息子が心配になり、みんなで息子のいる部屋へと急いだ。



息子は…。



はじめは机にもたれて寝ているかと思ったが、意識がなく気を失っていたのがわかった。

何度も何度も揺さぶったがなかなか起きてはくれず、妹は泣き出し、妻は娘を抱きしめていた。

ようやく気を取り戻したのはそれから30分ほど経ってからだ。

息子は気を失うまでの事を話し始めた。

私がそばを離れてすぐに部屋の空気が生暖かくなり、背筋がゾクゾクしたそうだ。

で、怖かったが思い切って振り返ってみた。するとそこに立っていたのは真っ黒い塊だったそう。ただ口元だけは真っ赤でそれがとても不気味だったと言っている。

何故こうも家族に恐怖を与えるのかわからなかった。御墓参りもちゃんとしている。毎日仏壇にも手を合わせているのだ。何かあるほうがおかしいと思うのは私だけだろうか…。

とりあえずはこの家を出てみることにした。

もちろん一番出るという部屋にビデオカメラをセットして。


そして後日家族みんなで見てみることにした。何が起こっているのかみんな知りたがったから。



はじめはなーんにも起きず、時間だけが徐々に過ぎていった。しかし、深夜の1時半にそれは起こった。

ボワっと音がして部屋の中に何かいると察した。

だが、そのままカメラは回っている。

そしてある一点から部屋の空気が変わり、電気がチカチカとし始める。

そしてビデオカメラの電源がいったん落ちた。再度電源が入ったのはほんの数分後のことだった。その時一瞬映像が映った。女の霊らしかった。口を大きく開け叫び声をあげながら近づいてきたところで映像は切れていた…。家族みんな固まっていた。

知らない女性だったからだ。

妻も子供達も知らないと首を振る。


祈祷師なるものがいることは知ってはいたが、実際に自分達が利用することはないと思っていたのでどうやって連絡したらいいのかわからなかったが、ネットを使ってようやく探し当てた。すぐにでもお祓いをしたかったが、出費は痛かった。それでもこの恐怖から解放されるのならと祈る思いで連絡した。するとすぐにあってくれるそうだ。何か見えたのかもしれない。

翌日、お昼頃に祈祷師はやってきた。そして私達の家を見ただけでこう答えた。

「この家では女性が一人行方不明になってるようですな。多分どこかに埋まってると思う。」「ぅ、本当ですか?」「はい、本当です。」「もしかして応接室だったりして…。」「行ってみましょう。」祈祷師を先頭に私達家族も歩いて向かう。恐怖の場所へ。


そして問題の部屋へと到着した。

娘や息子はビクビクしている。

妻も固まっていた。

唯一落ち着いていた私でさえ緊張してしまう。

祈祷師は部屋を見回すと部屋の隅へと歩いていく。

「ここです。ここにいますよ。」

祈祷師がさした指先の方角は息子の机が置いてある場所のすぐ近くだった。

解体屋にも来てもらっていたので早速床板をはがし始めた。そして、床下を掘り始めた。

業者の人間には人骨があるかもなんてことは話していない。だからテキパキと掘っていく。その時一人のスコップに何かが当たる感触があった。

そこで手で掘り始めたが間もなくそれは現れた。人骨だ。

「うわわっ。」業者さんはビックリして腰を抜かしていた。

祈祷師は祈り始め私達家族も祈り始めた。

「えい、えい、えい。」

それだけ言うとお辞儀をした。

「もう大丈夫ですよ。お祓いすみましたから。あとは警察を呼んでください。」

私は言われるまま警察を呼んだ。

事情聴取は祈祷師の方がしてくださり、私達家族もホッとした。これでもう現れることはないと。

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