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パイプ椅子と僕

作者: いたる

僕の部屋にはパイプ椅子がある。パイプ椅子に憧れた僕が中学で美術室で使われていないものをこっそり盗んだものだ。



ある日僕が友達と喧嘩をして帰ってきてパイプ椅子に座った時、突然それが喋った。

「相手も悪いがお前も悪いと思う所があるだろう」

そうだなと僕は思った。次の日友達に謝ると「俺も悪かったよ、ごめんな」とすぐに仲直りすることが出来た。



ある日テストの点数が悪くて落ち込んでいるとまたパイプ椅子が呟いた。

「落ち込むことが出来るのは勉強している証拠だ」

そうなんだろうか。そうかもしれない。



部活の試合で負けた時や、好きな女の子が出来た時、徹夜でゲームをして学校に遅れてしまった時も、

パイプ椅子は僕を励ましたり、応援してくれたり、時には少し強い口調でたしなめたりしてくれた。



妖精だとか、幽霊だとか僕は信じていない、でも何故かこのパイプ椅子が喋っている、この不思議な出来事は事実だと思っていた。



卒業式の日、僕はパイプ椅子を学校へ連れて行った。一緒に卒業式に出たかったからだ。



式が終わり、元あった美術室にパイプ椅子を返すか悩んでいた時だった。

「お前の卒業式を見られて良かったよ」

そう言ってバキリとパイプ椅子が壊れた。



小さい時に聞いたきりの、僕を呼ぶあの人の声。僕はパイプ椅子が誰だったのかにやっと気付いた。



僕は泣くことしか出来なかった。

読んでいただきありがとうございました!

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