表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/160

第二章 March of Ghost 21

 東大寺とうだいじがすぐに顔を引き締めると、長門ながとに出かけるのかと聞いたからだ。長門は新しい服(黒のボトムに、釦を一つしか止めない白いシャツと言う出立ちに変わりはないが)に着替えているが、まだ少し髪の毛が濡れていた。

綾瀬あやせから、次の仕事の連絡があったからな」

 長門は短く答えると、靴を履いて扉から出て行った。今帰ったばかりだと言うのに、慌ただしいことこの上ない。先程の綾瀬からの電話は、長門への仕事の依頼だったようだ。

 綾瀬はそう言えば、長門がボディガードだと言っていた。無愛想でアル中で、腹の立つ奴ではあるが、確かに銃の腕は相当なものだと愛美も思う。

「そう言えばあの人って、ボディガードなんですね。SGAって、本当によく分からない会社だわ」

 首を傾げる愛美に、東大寺は何でもないことのように頷いた。

「表の顔はボディガード。しかし、裏の顔は殺し屋。普通の高校生の俺も、実は超能力者やしな。今は辞めてるけど、紫苑は前はモデルやってん。紫苑に言われたやろ。SGAは何でも屋やって」

 長門が殺し屋。

(何でも屋って言われても・・・)

 何度も命を狙われ、非日常的な目に遭いながらも、愛美はまだ常識を捨てられないでいた。

 ちょうどそこに、愛美を呼ぶ紫苑しおんの声が聞こえた。遅い昼食の用意を、手伝って欲しいと言っている。

 愛美が廊下からキッチンに消えた途端、東大寺は浮かべていた笑みを消した。

「胸糞悪い野郎や。俺の過去を知っとるからって、いい気になりやがって。俺を拾ったんを恩に着せるんは、ええ加減止めてもらいたいもんや」

 恐い顔をして、そこにはいない誰かの姿を睨んでいた東大寺は、握り拳で老化の壁を殴りつけた。ドンと鈍い音がして、壁が凹む。

 途端、東大寺はいつものお気楽な表情に戻っていた。頭を抱えてその場に座り込むと、うわっちゃーと呻いた。

「見つかったら、また紫苑に怒られるやんけ」

「東大寺君、食事の用意が整いましたよ」

 いつも騒がしい音を東大寺は立てているので、今の音も紫苑は別段不審には思わなかったらしく、それに対する反応はない。

 紫苑の声に東大寺は焦ったものの、すぐに気を取り直していつもの明るい返事を返したのだった。

  *

 愛美は部屋に通されソファに案内されたが、すぐには席にはつかなかった。

「やだ、可愛い。バンダナなんかつけてる」

 綾瀬の秘書を名乗った西川と言う女性は、嫌がるクラディスを追いかけ回す愛美を、微笑ましい様子で眺めながら、お茶の用意をする為に部屋を出て行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ