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第一章 Welcome to my nightmare 5

れ」

 少女が低い声でそう命じた途端、教卓の近くから、怯えたような悲鳴が上がった。

「!」

(三宅先生の身体が、黒板の中に吸い込まれていく?)

 黒板はまるで、水か何かの液体であるかのように、幾つもの波紋を浮かべている。 

 誰も、何が起こっているのか、理解できなかった。

 それが視えたのは、愛美と・・・そして黒服の少女だけ。爬虫類を思わせる暗緑色の腕が、黒板から無数に伸び三宅教諭の体を捕らえているのだ。三本の鋭い鉤爪が、着衣を裂き肉にまで達していた。腕に口元を覆われ、悲鳴を上げることも適わないようだ。

 女は目を見開き、助けを求めるかのように伸ばされた指は、やがて力なく垂れた。半ば壁に塗り込められた格好で、三宅教諭は息絶えた。それとともに愛美の視界からも、そのおぞましい腕は黒板の中に姿を消した。

(何、あの腕は! どうしてみんなは気付かないの?)

「一体、どうなってんだよ・・・」

 誰かが、みんなの思いを代表するかのように呟いた。黒い服を着た死神が、それを嘲笑うかの如く宣告を下す。

「さあ。次に死にたいのは誰だ」

 その時、静かだがとてもしっかりした声が、教室に響いた。

「何で私達が、こんな目に合わなければ、いけないんですか」

(優子!)

 クラス委員長は、こんな時にまでやはり〈委員長〉だ。目の前で三宅教諭の、不可解な死に様を目にしたにも関わらず、冷静さを失っていない。いや。目にしたからこそかも知れないが。だが死神は、鼠を見つけた猫のように、今にも舌舐めずりをしそうな表情を浮かべた。

「それは、当然、夜久野・・・いや。お前達が近藤愛美と呼んでいる、クラスメイトの所為だ。貴様がさっさと吐けば済むこと」

 少女は、教室中を見渡し、最後の部分は愛美に向けてそう言った。

「マナが何だって言うんだよ! ふざけた事ばっかり言ってるんじゃねぇ」

「そうよ。あんた一体何様のつもり。いい加減にしてよ」

「いい加減にして、もう」

(中岡、ゆかりちゃん、みんな・・・)

 委員長の発言を契機にして、クラスが一つにまとまった。一斉に食ってかかった生徒達を、しかし悪魔は、意地の悪い目付きで見ている。

「人の情程、当てにならないものはない。誰だって、自分の身が一番可愛いものだからな。お前達の友情ごっこを、見にきた訳じゃないんだ。そろそろ終わりにしようか」

 少女は右手を伸ばすと、今まで彼女の周りを取り囲むようにして、じっと控えていた下僕どもに合図を送った。犬(狼?)どもは、主人の言葉を一言も聞き漏らすまいと全神経を耳に集中させている。

「こんなガキどもが相手では、お前達には物足りぬだろうが。存分に喰らうがいい」

「行け!」

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