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第一章 Welcome to my nightmare 11

「あなたの名は〈夜久野やくの〉と言うのですか?」

「違うわ。私は近藤愛美こんどうまなみだわ。他の誰でもない!」

 紫苑しおんの問いに、愛美は間髪を入れずに応えた。

「夜久野って名前に、何かあるんか、紫苑?」

 紫苑は何かを知っているようだったが、それには答えずただ小さく肩を竦めただけだった。

「恐らく相手は陰陽師。あの使役神は陰陽師の放った式神でしょう。術者の残した最後の言葉が気になります。御家族はどこに?」

「弟が風邪で学校を休んでて、母と家にいます。父は会社です」

 愛美は不安そうに、紫苑と東大寺の顔を交互に見た。その目が救いを求めている。

「急いだ方がいいかも知れません。車で送りましょう」

 紫苑はそう言うと、東大寺少年を見た。東大寺とうだいじは分かっていると言うように、両手をひらひらさせた。

「こっちの処理が終わったら、すぐ車を追うから心配すんな。二・三分もあったら終わるって」

 紫苑の顔に不安の色が浮かぶが、東大寺もまさか、それが迷子になるのではと言う危惧からだとは、流石に思わなかったようだ。

「この俺を誰やと思ってんねん。天才超能力者に任しとき」

 紫苑はまだ何か言いたそうだったが、今はそれどころではないと思い直し愛美を連れて教室を離れた。

 暫くすると、救急車の鳴らすサイレンの音が聞こえてきた。

「ようやく来たんか」

 東大寺は腕の時計の針に目を走らせ、時間を確認した。電話をかけて約五分。優秀と言うべきかいなか、彼にとっては勿論答えは否だ。

 紫苑の言っていた、結界が解けたのだろう。階下のざわめきが伝わってくる。あまり時間がないようだ。東大寺は大股で黒板に近付くと、少しだけ頭を下げた。

「ちょっとだけ乱暴やけど堪忍したってな。今そっから出したるさかい」

 当然のことながらそれに対する返事はないが――あったらそれこそ怖い――死体の埋まった黒板に向けて、東大寺は指を突き出した。盛大な音とともに黒板ごと壁が崩れ落ちる。瓦礫の中に女の身体は埋没してしまうが、壁に埋まったままよりましだろう。

「よっしゃ、証拠隠滅完了や」

せわしない足音が、この教室めがけて近付いてくる。

(この状態で集団暗示なんかかけても、効果薄いやろし。まあ、ええか。何が起こったか証言しても、誰も信じへんやろ)

 東大寺少年の姿がまるで元々いなかったかのように、その場から見えなくなる。

 教師と救急隊員が駆けつけた時には、床に転がる生徒の姿だけがあった。

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