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第三章 Fallen Angel 34

 同じ家で暮らしていると言っても、長門ながとのいる昼間は愛美は学校だし、愛美まなみが帰ってくる頃に長門は仕事に行くので滅多に顔を合わせる機会はなかった。

 それに家にいる時の長門は、殆ど部屋に閉じこもっている。

「人、殺したの?」

 長門の仕事は大抵は要人のボディガードらしいが、暗殺の仕事も請け負っていることを東大寺が教えてくれた。長門が拳銃を持っているのも、愛美は何度か見たことがある。

「なぜ、そんなことを聞く?」

 長門は無愛想で、自分からはあまり口を聞かない。口を開いても、二言三言しか話さないのが常だった。

「血の臭いがするって」

 長門は一言、染み付いているのだと答えた。長門が近付くと、強いアルコールの臭いがした。

 愛美の側を通る時、長門は開いていた愛美の部屋をチラリと横目で見た。

「いる」

 何がいるとは言わなかったが、長門はベッドの上を直視していた。しかし、すぐにそのままリビングに行ってしまう。

 愛美が乱暴に扉を閉めた音で、二匹の山犬神は薄目を開けたが、すぐにつまらなそうに目を閉じた。

「あなたにはえるの?」

 長門は冷蔵庫から、缶ビールを取り出している。相変わらず酒の好きな男だ。

 気配を感じるだけだと長門は言って、ソファに腰掛けた。

「俺が京都行きに付き合おうか?」

 長門が自分から口を聞くのは珍しい。愛美は一瞬、なんの話か分からなかった。

 綾瀬あやせが、愛美一人では心許無いので長門か東大寺とうだいじに頼むと言っていたのを思い出し、ようやく口を開いた。

「あなたがですか?」

 愛美の言葉尻には、長門を疎ましく思っている様子がありありと表れている。しかし、長門はそれを何とも感じていないらしい。

 ビールを喉を鳴らして飲み干すと、テーブルの上にコツンと置いた。

「殺しは俺の十八番おはこだから」

 何を考えているのか分からない目が、愛美を見ている。愛美は訳の分からない恐怖を感じた。

「東大寺の都合が、悪ければの話だ」

 長門はそれだけ言って話を切り上げると、冷蔵庫から缶ビールを数本取り出して、自室に引き上げて行った。

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