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第三章 Fallen Angel 24

 愛美まなみ瑞穂みずほはどうなったのと聞くと、集中治療室だと答えて、ともえは後部座席から病院を振り返った。

神坂大和かんざかやまとは、病院に運ばれる途中で亡くなったそうです」

 愛美も振り返る。

 やはり大和は死んだのだ。

 瑞穂も、愛美と同じ病院に運ばれていたのか。集中治療室に入っているなら面会など叶わないが、元気になったら一度会いに行きたい。

 友達になって欲しいと言う大和の遺言を、叶えることはできないかも知れないが、大和と交わした会話を伝えて上げたかった。何も知らずにいるのは可愛そうだ。

右近うこん左近さこんは、大丈夫だったの?」

 右近は那鬼なきの所為で、右目に傷を負った。愛美が覚えている範囲では、右近はその後、立ち上がっていなかった。

(山の神でも死ぬのだろうか?)

 愛美の言葉は、巴には伝わらなかった。何も言わずに、愛美を見つめている。愛美は自分が間違ったことを言ったような気分になり、居心地悪げに身動みじろぎした。

「〈明星あけぼし〉を守ってくれてる山の神様」

 嘲笑われるかと思ったが、巴はそんな折でも笑わなかった。

紫苑しおんさんと同じで、あなたは人にえないものが視えるんだ。〈明星〉は奪われたが、彼らがいれば取り戻すことは可能だろう。綾瀬あやせさんの言葉。僕には意味は分からなかったけれど、お姉さんの質問の解答にはなりました」

 巴はそう言った後、タクシーの運転手により詳細な行き先を告げた。向かうのは、綾瀬のマンションだ。

  *

あきら。お前、何かよからぬことを企んでいるのではないな。若い者達を集めて何をする気だ?』

 渡り廊下で擦れ違った兄が、いつもの揶揄するような調子で言った。二十四才の若さで家長の座についただけあって、自然な威厳と度量が備わっている。

 兄の前に立つと、晃は身体が萎縮する。越えたいと思いつつも、決して越えられないハードルを前にした、陸上選手の心の葛藤に近いかも知れない。

『別に何も。消えゆく上月こうづきの為に、最後の華を咲かせたくてね』

夜久野やくのに手は出すなよ』

(なぜ分かったのだろう? やはり兄は侮れない)

 大体兄は、本当は何でも知っている癖に、わざと持って回った言い方をする。兄が意味深な発言をする時、全て知っているのだぞと言う、無言の圧力をかけられているような気分になる。

『夜久野?』

 晃はできるだけ不思議そうな顔をして、そう問い返した。

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