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H老人の夜更かし

午前零時、H老人が「星を見るのが俺の仕事だ」と言ってふらふらした足取りでフロアへ出てきて椅子に座ってカーテンを開けて夜空を見上げる。転倒の恐れがあるので(以前も似たようなケースで転倒した過去がある)、居室へ戻るように促すのだが馬耳東風で、それどころか「煩い! 誰が戻るか!」と怒鳴り返してくるという有様。夜勤中にこれをやられると苛々する。乱暴な言葉を使えば、殺意を覚える。

「このボケ老人、早く死ね」と言えたらどれだけ溜飲の下がる思いだろう。僕はたぶん介護師に向いていないんだと思う。認知症老人が僕の中の獣性を引きずり出す。心底殴りたい、と思う。

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