日記
介護福祉士の資格を取ろうと思う。
そこで必要なのは、何はさて書類である。
介護福祉士の資格取得のための道程・方法さまざまあるが、僕は「実務経験が三年以上であれば受験資格を得られる」というルートを選択した。そして「三年間働いたこと」を証明するための書類が必要になる。
実に長かった。三年である。
高校を卒業して就いた本屋を馘首され、路頭に迷っていた折に、「もう何でもいいから仕事をしよう」と思いつめ、向こう見ずに飛び込んだのが介護業界、そこに身を置いてもう三年が経つ……。早いものだ。
そこで、以前に勤めていた「木下の介護」に連絡を取る。ここで一年以上働いていた。それを証明するための書類作成に、「事業所番号」「認定コード」なるものを記入しなければならないのだ。これを問い合わせようと思った。
まずインターネットで電話番号を検索。携帯電話で連絡を取る。コール音が数秒続いてから相手が出る。
「はい」と、女の声が聞こえた。
……はい、だ。「こちら木下の介護総合受付です」とか、そういった紋切り型の常套句すらなく、ただ一言、「はい」。もうこの時点で厭な予感がした。暗雲が立ち込めてきたと思った。こちらが名乗ると、ようやく思い出したように「木下の介護です」と言った。
「以前にそちらで勤めていたものです。勤めていた施設の事業者番号を教えていただきたいのですが」
「あー、ちょっとお待ちください」
数分の後、
「すいません、ちょっとこちらでは分かりませんねぇ」
「じゃあすいませんが施設の電話番号だけ教えていただけますか」
「……はい」
億劫そうに調べ始める。
「分かりました。○○○-○○○……」
「あ、すいません、メモを取りたいのでちょっと待っていただけますか」
「はぁ……」
「はい、大丈夫です」
「じゃあもう一度言いますね。○○○……」
「どうもありがとうございます」
「では」がちゃん。
……いや、いいもんね。慣れてるよ。人に冷たくされるのは。




