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黒龍の御子  作者: taka
第一章 御子の旅立ち
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第4話 広がる世界、果てしない大地

連続投稿ラストです

次回からは平常運行でいきます

 カルデラから飛び立った俺はこの大陸の南東、母さんが生まれ育った国、ノスティーア王国を目指す。ユベルト山周辺に厚くかかった雲が視界下一面に広がっている。その光景がしばらく続いたが、突然、雲がはれ地上が見えた。


 「・・・これが、外の、世界」


 視界に広がったのはどこまでも続く大地。多くの草木が生い茂り、川が流れ、その景色が見渡す限りに広がっている。

 その光景に思わず前に飛ぶことを止め、その場に滞空してこの景色を眺める。頭の中が真っ白になった。いや、その表現は正確ではない。このどこまでも続く光景が全てを占めていた。


 「・・・あ、あはは」


 思わず笑いがこぼれる。


 「ははっ、あはははっ、あははははははっ!!」


 やがて空の上で腹を抱えて大爆笑してしまう。


 「凄い!これが、これがっ、世界!!」


 小さなカルデラで今まで生活してきた自分があまりにちっぽけに感じてしまう。世界はこんなにも広く、大きい!

 ようやく自分はこの世界に旅立ったんだと実感した。そして同時に感じた。

 俺はどこまでも行ける。この大地のように、どこまでもっ!

 今までに感じたことのない万能感と、湧き上がるどこまでも行きたいと言う欲求。しばらくの間、この生まれて初めて感じた強烈な感情に身を委ねていた。


 どれくらい経っただろうか?ようやく気持ちも落ち着いて、再び南東に向って飛び立つ。父さんが言うには今の俺だと一直線に目的地、セルビアン家に飛んだとしても丸2日かかるそうだ。


 「父さんなら2時間とかからんがな!」


 などと自慢げに話していたが、これは蛇足。何だかんだで父さんのいう事は大抵正しいのでその通りなんだろう。だとすると目的地に着くのは実際にはもっとかかってしまうはずだ。そもそもこうして外の世界へ初めて出た上、目的地であるセルビアン家にも当然いったことがないのである。母さんからもらった地図を確認しながらになるし、何よりずっととんでいる訳にもいかない。

 これは俺自身の変身による体力、精神力の消費も当然要因の一つだが、何より俺が変化している所、つまり俺が龍と人との間に生まれた子だというのを極力晒さないようにするためである。外の世界に慣れない内にそういった危険は犯さないようにと両親から注意されていた。


 そのため人里が多くなってくると目撃される恐れがあるので飛行は避けなくてはならない。となると地上を歩くか他の移動手段をとることになる。幸いなことに父さんからある程度までの飛行可能ルートは教えてもらっている。そこからは徒歩でも2日から3日でセルビアン家にたどり着けるらしい。母さんからは近くの村で馬車などに乗っていく手もあると言われており、乗るためのお金ももらっている。


 この大陸では言語と同じく共通の硬貨が出回っており、下から半銭銅貨、銅貨、半銭銀貨、銀貨、半銭金貨、金貨、真銭金貨がある。単位はゴールドで半銭銅貨から一、十、百、千、万、十万、百万ゴールドである。

 母さんからもらったのは銀貨5枚、つまり5千ゴールドである。距離にもよるらしいが、馬車だとセルビアン家の近くまでだと1日らしく、それだと5百ゴールドで行けるとのことだ。持たせすぎなんじゃ?とも思ったが、何かあるかわからないからと持たされた。


 そんな訳で父さんから教えられたルートで飛んで行く。流石は父さんと言うべきか。人里や通行ルートをうまく避けているらしく未だ人影すら見かけていない。とは言えいくつかの動物たちは見かけた。その度に飛行を一時中断していたので、結局当初の予定である一日目の野宿する森までたどり着くのに時間がかかってしまい、着いたのは夜だった。


 夜でも視界がふさがれることのない俺は特に問題なく森を発見。念のため辺りを警戒し、安全を確認してから降り立った。地上に降りてから初めて自分が思いのほか疲労していることに気付く。確かに今まで半日中飛んでいたことはなかったため当然だが、それを感じないほどに興奮していたと改めて実感。明日からは気を付けようと苦笑しながら持ってきていた荷物から食料を取り出す。と言っても持っているのは腰に掛けた小袋だけ。だがこの小袋は見た目のそれではなくあるマジックアイテムである。


 『ハーベスポーチ』と呼ばれるもので見た目は小さいが無属の空間拡張魔法が掛けられておりかなりの量が入る上、出したいものを念じて手を入れると念じた品を出せると言う優れものである。ちなみにこのハーベスポーチは同タイプの『マジックポーチ』の上位版であり、ハーベスポーチはマジックポーチにはない収納物保護能力が備わっており、収納物の劣化を防ぐ能力がある。つまりこの中に入れておいた食材なども鮮度を保ったまま保管できるというものだ。


 俺はポーチから出したパンと生肉をだし、魔法で火を起こして取り出したフライパンで生肉を焼き、遅めの夕食をとった。よく考えると一人での夕食はこれが初めてだ。そんなことを考えながら早々に食事を済ませ、取り出した毛布をかぶって早々に就寝。やはり疲れていたのだろう。直ぐに睡魔が襲ってきて眠りにつくのだった。





 翌朝、森の木々からもれる日の光によって目を覚ます。父さんからの訓練で寝ている間にも周囲の気配を察知できるようになっていたが、昨夜はどうやら特に危険もなくすごせたらしい。まだ少し寝ぼけている頭を振り覚醒させる。それから広げていた毛布などを片付けてから近くを流れていた川で顔を洗い、スッキリしてから再び空へと飛び立つ。


 昨日はいろいろと初めて見る景色や動物などに目を奪われて考えていたよりもかなり飛ぶペースが落ちたことを反省して真面目に南東を目指す。

 太陽も高い位置に上った頃、昼の休憩にと差し掛かった森に下りて昼食をとる。たまたま見つけた木の実などもあわせて食べる。一応知識として知っているものだったが、食べる時は流石にどきどきした。木の実は熟していてとてもおいしかった。


 そうして休憩なども挟んで飛んだ結果、昨日とは打って変わって予定よりも早く目的の森へと到着した。早々に夕食を済ました俺はこの後どうするかを考え出した。

 ここからは人里などが多いため、飛行はできない。となると近くの村で母さんが言っていたように馬車を探すか?歩いていく手もあるにはあるが、出来ればそれはとりたくない。疲れると言った理由ではなく、長距離を歩いたことがない俺が、行った事もない場所にたどり着く可能性に若干の不安があるからだ。となるとやはり馬車か。近くの村へ行き、セルビアン領の中央に位置するセルビアン家に近いものに乗る。


 それぞれの地方にはその地を治める貴族がおり、その名がそのままその地方の名前になっている。そのため俺が目指すのはセルビアン領中央に位置するセルビアンの屋敷だ。厳密には今俺がいるこの森は既にセルビアン領内なのだ。


 大まかな方針が決まった所で就寝。明日は人里に入る。つまりは初めて両親以外の人と関わることになるわけだ。期待やら不安やらでごっちゃになった頭を落ち着かせて眠りにつくのだった。





 「・・・っ!?」


 翌朝、そろそろ起きるというところで自分の意に反して飛び起こされる。すぐさま当たりを確認するが特に変わった様子はない。だが、確実に俺を起こさせたもの、いや事か?が起こっているのは間違いない。それは・・・。


 「・・・悲鳴?それになんだろう、これは。・・・争う音?」


 突如起こされた頭を無理やり振って覚醒させる。何かしら起こっているのは間違いない。退避するという選択肢もあったが、聞こえてきた声は切羽つまっているように聞こえた。正直放っておく気にはなれなかった。すばやく支度をしてその音のするほうへと向かうのだった。




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