第16話 今後、・・・事後?
フィリアとキューリアさんを見送った俺はポーチから取り出した筆記用具一式で手紙、と言うか報告書?のような物を執筆中。
もともとセルビアン家を出るときに事前に爺さんから定期的に俺の現状を伝えるようにと取り決めていたのだけれども、今回は少し内容が異なる。
今回フィリアと出会ったことでエルフ族、と言うか精霊との親和性の高い種族には俺の正体がばれてしまうという事実が判明したからだ。これはまったくの予想外で現状俺には打つ手すら思い浮かばず、相談できる相手は事の発端であるフィリアを除けば爺さんだけな為、今回のことを手紙で伝えてどうすればいいか訪ねようと言うことになった。
エルフのように高い精霊との親和性を持つ種族はそう多くはないけれど、だからと言って現状のままにしておくわけにもいかない。今回のように思わぬ事態にならないとも限らないので、今後はいっそう注意しながら、できうる限り早く何かしらの対策を講じなければならない。
自分自身にはどうにもできないけれど・・・
爺さん頼りになってしまうけれども・・・
とりあえず書き終わった手紙をしまい、後から爺さんとの連絡に使っている伝書用のリフリーで送ることにする。本来ギルドで用いられているリフリーはこうして一般の伝書用としても用いられているそうで、俺が手紙を送るのに使っているリフリーは爺さん専用の物だ。
手紙が片付いた俺は今後のことについて考えを巡らしていく。
今回のことで、結果的にフィリアを預かる形になった。と言うのも現状フィリアはもともと住んでいた土地に戻ることはできず、新天地に移るにしても資金も伝もなく、何より自身の生まれが彼女の身動きを封じる形になっている。
さすがにそんな娘を放り出せるほど薄情ではないので、とりあえず当分の間は俺と行動を共にすると言う形で話がついた。つまりはギルドで同じく依頼をこなしていくと言うことになり、当然危険もあるわけだけれど、同時にお金も貯まり、同時にギルド内での知り合いなども増えれば彼女の今後にもいい方向に向かうことも十分にありえる為、決して悪い選択ではないはずだ。
彼女の話だといくつかの魔法と弓を使えるらしいので、後でどの程度なのか確認しておく必要があるな。あとは住む所。これは俺が使っている宿でもう一部屋借りればいいか。それに必要な日用品、どうやら彼女は本当に着の身着のままだったようなので服なども必要だ。一応事情を話したキューリアさんに服を貸してもらえるように頼んではいるけれど、さすがにそのままでは両方に悪いので、すぐに買い揃えたほうが良いだろう。
後は戦闘で使うだろう弓と魔法発動体も必要だ。
う~ん。ちょっと考えただけでも、結構必要な物が多いな。これは買い物が大変そうだ。まあ、この数日依頼をこなしてそれなりにお金は貯まったので問題はないはず。
あと問題があるとすればフィリアの人見知りと世間知らずぐらいかな?
・・・・・・いや、人の事言えないんだけれどね。
彼女も人里には来たことがないらしいので、ちょうどこの町に来た時の俺と一緒。いや、人見知りがあるから、俺よりも大変かな?必要な物を買い揃えるにしても必ず他の人には会うだろうし、だからと言って俺が買い揃えるわけにもいかないし。女の子の必要な物なんてわかんないよ俺。
やっぱりどう考えても俺一人だと色々無理そうだから、買い物時にもキューリアさんに手伝ってもらえないか聞いてみることにしよう。現時点でも色々と迷惑をかけている上、これ以上となるとさすがに気が引けてしまうけれど、さすがに俺だけだと無理だ。なんとかキューリアさんに同行してもらえないか頼んでみよう。
そんな風にこれからの事を考えていると程なくして二人が戻ってきた。フィリアは先ほどまで着ていたボロボロの服ではなく、キューリアさんから借りたであろう服を着ている。
それにしても、なんだか見違えた。灰色がかっていた髪は、光を反射させながら光る銀色。ダークエルフ特有の褐色の肌は、その色とは矛盾して輝いているように見えるから不思議だ。
そんな彼女の姿にしばらく目を奪われていたのでけれど、不意に気が付いた。
「どうか、した?」
なんでフィリア、涙目なんだ?




