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黒龍の御子  作者: taka
第二章 剣と狼
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第14話 変わる、運命

  フィリアside


 次に私が目を覚ましたのは小さな木でできた四角い部屋の中でした。朦朧とする意識の中、辺りを見回そうとして首筋に鈍い痛みを感じて首に手を持っていったところで何かがついていることに気づきました。どうにもそれは鉄で出来た首輪のようで、そこから鎖が伸び、部屋の端に繋がっていました。


 その事を認識したところでようやく意識がハッキリとしてきました。今居るこの四角い部屋、閉じられた扉意外には窓もなく、なぜか地震でも起きているかのようにゆらゆらと揺れていました。唯一ある扉から外に出ようとしましたが繋がれた鎖でそこまでいくことができず、押し寄せてくる疲労感であまり動く事もできず、仕方なくおとなしく座っていました。


 しばらくしてから外から話し声が聞こえてくる事に気が付き、耳を澄まして聞いているうちにいくつかのことがわかりました。


 私が攫われてしまった事。私のことを攫った人たちは私を誰かに売ってお金を手に入れようとしていること。


 遅まきながら今私が居る、いえ、乗っているのが以前おじいさんの話に出てきた馬車という乗り物だという事もなんとなくわかりました。


 そこまで解って、でも私はここを逃げ出そうとも、声を上げて助けを呼ぼうとも思いませんでした。そもそもハーフダークエルフの私を買おうとするような人がいるのか疑問にも思いましたが、それすら深く考える事ができないくらい、私の心は沈みきっていました。




 どうして・・・




 どれくらい経ったのか、そもそも日の光すらまともに入ってこないので今が昼なんか夜なのかすら解りませんでしたが、外から激しい物音が響いてきました。それがしばらく続き、どうしたのだろうと思っていると、唐突に今までの物音とは異なる、大きな、そう、大きな唸り声が響き渡りました。


 流石にそれには驚いて、ふらふらと立ち上がった、瞬間_____


 「____っえ、きゃあっ!?」


 突然直ぐ横の壁を突き抜けて木の幹が床に叩きつけられた。その衝撃で私は吹き飛ばされ、外の地面に叩きつけられました。

 叩きつけられた衝撃でしばらく身動きが取れませんでしたが、何とか辺りを見回して私は言葉を失いました。辺り一面が血の海になっていて、その発生源にはいくつもの死体が______


 「ひぃっ!」


 思わず悲鳴を上げて後ずさってしまいました。その死体の中にはおぼろげながら私を襲った男の人も含まれているようで・・・。

 そこまで考えたところで壊れた馬車の方から、私を襲った男の人が小さく思えてしまうほどの巨体が姿を現しました。

 手には先ほど馬車の壁を突き抜けてきた木の幹、いえ、木の幹をそのまま使ったような棍棒ともう片方の手に血で真っ赤に濡れた槍を持って現れた異形。

 直感的にそれがおじいさんの話に良く出てきたモンスターなんだとわかった。

 そしてそのモンスターが私の方へと視線を_____


 そのときには私は駆け出していた。疲労した体に鞭打ち、出せる限りの速さで森の中を駆けていく。後ろからは絶えず身の毛もよだつ唸り声と木々がミシミシとなぎ倒される音を聞きながら、それでも必死に走り続ける。




 どうして・・・・・




 けれど疲れ果てていた私の体は思うように動かず、焦りと恐怖でどんどん鼓動が早まる。さらには後ろから聞こえてくる音が少しずつ距離を縮めてきていて、そのことがよりいっそう私を焦らせる。


 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、っつ、あっ!!」


 そしてとうとう私は足をもつれさせて転んでしまいました。急いで起き上がったところで大きな影が差し、振り返った先には先ほど見たモンスターが、それも4体もいて私を取り囲んでいました。


 「あっ、うっ・・・・。」


 その光景に思わず後ずさり、すぐさま後ろにあった木の幹に後退を遮られてしまいました。ガタガタと震える私にモンスターたちはゆっくりと近づいてきます。近づいて来るにつれ、漂ってくる異臭と獲物を見るその目にすっかり私は震え上がりまったく身動きが取れなくなりました。




 どうして?



 どうしてなの?



 私はただおじいさんとおばあさんと3人でひっそりと暮らして居たかっただけなのに。



 おじいさんとおばあさんは死んでしまった。



 ずっと暮らしてきたあの家にももう戻れない。



 そして今まさにモンスターの手にかかろうとしている。



 神様はどうして私の事がこんなにも嫌いなんだろう?



 私がハーフダークエルフだから?



 私は______



 生きてちゃ、ダメなのかな?




 とうとう一匹のモンスターが私に手を伸ばしてくる。それに目を硬く閉じ身を強張らせた。


 次に来たのは、身を捕まれる圧迫感でもなく、体を引き裂かれる激痛でもなく。






 モンスター達の唸り声すら越える轟音。







 そして恐る恐る開けた目に映ったのは、







 黒衣をはためかせた、青年の姿だった。

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