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黒龍の御子  作者: taka
第二章 剣と狼
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第5話 初依頼

 ギルドで受けた依頼で目的地が明確な場合、また、極端に距離が離れていない場合にはギルドが提携している馬車などの交通手段を利用する事ができるそうだ。基本的には何らかの荷物の運搬などと合わせてのものなので目的地に直行と言うわけにもいかないらしいがある程度は融通してくれるらしい


 今回俺が受けた依頼の目的地である農村地帯に行く馬車がたまたまあったため、そういった心配はなくてすんだ。


 ギルドから少しはなれた運送用馬車乗り場から馬車に乗り込み、今は外の景色をぼんやりと眺めている。視界の端には数羽の小鳥が飛んでいるのが見える。実はこの鳥たちは野生の鳥ではなく、ギルドが所有しているリフリーと呼ばれる小鳥たちだ。リフリーとはただの呼称で鳥たちの種類はばらばらだ。ギルドが現地の簡単な調査や、依頼の成否の確認などに用いられているらしい。それぞれに鳥たちにいくつかの魔法処理が施されていて、リフリーの収集した情報をギルドにある専用の魔道装置で読み取ることで依頼が達成されたかどうか判断するとの事だ。


 馬車に乗ってから1時間ほどで目的の農村地帯に着いた。馬車の御者さんにお礼を言ってから馬車を降り、あらかじめ指定されていた場所、今回の依頼を出したこの一帯の農村地帯の代表さんの家へと向う。ちなみに地図などは持っていなく、リフリーに案内して貰っている。道案内まで出来るんだから凄いな~。


 そんな事を思っているうちに代表さんの家に着く。農村地帯だからか家々が隣り合っているわけではなく、点在しているようで代表さんの家もぽつんと一軒建っている。見たところ少し遠くにある他の家々と対して変わらない造りと大きさだ。



 その後代表さんから今回の依頼内容の確認とゴブリンの住処であろう場所を聞いた後、家を後にする。代表さんはどうやら俺のような歳の者が来るとは思っていなかったらしく少々驚いた様子だった。若干不安がっているようにも見えた。やっぱり俺くらいの年のころでギルドの依頼を受けるのは珍しいのかな?なんて事を思いながら目的地、農村地帯から少し外れた比較的深い林に向う。



 程なくして目的の林にたどり着く。林に入る前に背にかけていた長剣とポーションの確認をしてから林の中に足を踏み入れる。見たところ特に変わった所はないようで、草木が生い茂り木の実なども豊富とはいかないまでも実っている。これならわざわざゴブリンたちも農村にまで降りてこなくてもいいんじゃないのかな?と思うが、先ほどの代表さんから聞いた話によると、林でところどころに実っているものよりも人々が一箇所で育てている農作物を一気に奪うほうが効率的故に狙われているのではないかとの事だ。まあそれはそうかもしれないけれど、確かに狙われるほうはたまったものじゃないな。

 それに加え、今回のゴブリンたちは少し離れた山々から流れてきた個体らしく、今はまだこの土地に慣れていないためか、人的な被害は及ぼしていないが、それも時間の問題らしい。そんなわけで早急に討伐する必要があるわけだ。


 そうして歩いているうちに少々地面が隆起している地帯にでる。っと同時にいくつかの気配を感じ取る。ただの野生動物にしては気配が大きい。何度か訓練で相手取っていたため間違いないだろう。


 「(気配は、1、2、・・・・全部で4体。依頼にあった通りの数みたいだな)」


 こちらに気付かれないよう気配を探る。どうやらゴブリンたちは盛り上がった地表に出来ている横穴を住処にしているらしい。ゴブリンたちは比較的に夜行性よりらしいが気配から察するに、どうやらここにいるゴブリンたちは現在皆起きているようだ。


 さて、このまま正面から行ってもまったく問題はないと思うし、何より横穴にそれなりの威力の魔法を放てばそれだけで決着がつくだろうけれど自重する。どうやら世間一般では魔法を扱えると言う事自体で一つの評価に繋がるらしく、俺自身あまり注目を集める事はよろしくないので、必要時以外では控えるべきだと考えている。


 そんな訳で魔法は使わない方向で、初仕事なので念のため慎重を期することにする。狭い横穴に入るのはあまりよくないだろうと思い、気配を殺して穴に近づき、直ぐ横に待機。傍らに転がっていた小石を拾い上げて穴の入り口の壁に投げつける。穴の中に音が軽く響くのを確認してから、長剣の柄に手を掛けて機会を覗う。すぐさま足音と共に気配が近づいてくるのを感じ取る。そして穴から一匹のゴブリンが出てきた。どうやら感じ取った気配通り起きてはいたらしいがどうにも寝ぼけ気味のようで緑色の顔をこすりながら出てくる。


 出てきたゴブリンがこちらに気付く間を与える事をせずそのまま長剣を一閃。ゴブリンの首を落とす。同時に噴出す紫色の血飛沫を浴びるのがいやだったのでその場を上に跳躍。自分の身長の大体二倍くらいある高さの隆起した地表、ちょうど横穴の入り口の真上に一息で着地する。

 これらの動作を1秒のうちに済ませ、眼前を見下ろす。ちょうど首を落とされたゴブリンの体が地面に倒れる。少しして穴の中にいた他のゴブリンたちが異変に気付いたのだろう。穴から飛び出してきた。出てきた三匹はそれぞれ手に太い木でできた棍棒を持っており、味方の一匹が殺されたのを確認すると怒りを露にそれぞれ吼え、あたりを見回している。


 その様子を上から確認し、ちょうど三匹があたりを見回すことで出来た死角。ちょうど三匹の中央に音を立てずにすばやく降り立つ、と同時に長剣による斬撃を自分を中心にちょうど一回りするように放つ。すぐさまその場を離脱して振り返ると、胴体を同じ高さで両断されたゴブリン三匹が崩れ落ちるところだった。


 四匹のゴブリンを排除し、念のため他にいないか気配を探り、いないことを確認してようやく一息ついた。とは言っても目の前には自分が起こした中々に刺激の強い光景が広がっている為どうにも完全に肩の力を抜けないなと苦笑が洩れる。

 何にせよこれでギルドでの初依頼は達成。俺はそれから確認の為降りてきたリフリーを確認した後、その場を後にした。




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