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黒龍の御子  作者: taka
第二章 剣と狼
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第3話 ギルド

 アーヘンバッハ商会を出た俺はハンスさんの助言の通り、まずは装備品をそろえる為近くにあった武具店に入る。中には剣、短刀、槍、斧など多種多様な武器から盾や鎧などの防具品、中には俺の使っているハーベスポーチの下位版のマジックポーチなども取り揃えられていた。何気にマジックポーチが下手な武器より高いのがちょっとびっくりした。平均的な武器の値の2,5倍ほど。俺の持っているハーベスポーチだったらいくらするのかな?と思いつつも目当ての品を探す。


 店内をしばらく見て周り、割と頑丈そうな鉄製の長剣を一振りと持っていなかった傷や体力の回復に効果のある回復用ポーションを5つほど選ぶ。ポーションは水系の魔法の使い手がその用途にあった薬草などで製作することでできる品だ。俺が選んだ回復用の物や、解毒、一時的な身体強化など多種多様に存在する。

 それらをカウンターにもって行き会計を済ませる。途中なぜか他の客やら店の人に怪訝そうに見られていたがとりあえずは気にせずにお金を払う。

 長剣は1万5千ゴールド、ポーションは5つで2千500ゴールドの計1万7千500ゴールドだった。結構な出費になってしまったが、目的の品は手に入ったのでよしとしよう。

 店を出てから買ったばかりの長剣を背中に掛けポーションをポーチに収納して早速ギルドに向かう。


 大道りを少し歩き、以前ユリアと来たときに見かけた剣を加えた狼のエンブレムが彫られたここ、冒険者ギルドへとやってきた。中からは騒がしいほどではないが騒音が響いてくる。木でできた扉を開いて中に入ると一瞬視線が集中したがすぐさま視線が散る。中にはずっと俺の方を見ている者もいる様だが、とりあえずは無視して奥にある受付け用らしきカウンターへと向かう。受付にいたのは俺よりも年上らしき薄い赤毛を短いポニーにした女の人。なぜか屋敷にいたメイドさんたちみたいな格好をしているがこの人もメイドさんなのかな?どうやらギルドでは食事もできるらしく給仕として働いている人たちも同じ様な格好をしている。

 まあ、それは置いておくとして。早速受付嬢さんに声を掛けることにする。


 「すみません。ギルドに登録したいんですが。」


 すると受付嬢さんがさっと俺のことを上から下まで確認したかと思うとちょっと困ったような笑みを浮かべた。


 「ええと、確かに登録はできるけれど。君、ちゃんとここがどういう場所かわかってるかしら?依頼を受けるにしてもどれも危険が伴う物ばかりなのよ?」


 そう半ば諭されるようなことを言われてしまった。その言葉に思わず首を傾げてしまう。ちゃんとギルドのことはユリアやハンスさんに聞いてきたので理解している。もしかしたら何か間違えたかなと、とりあえずギルドの仕組みについてはわかっている旨を伝えようとしたところ・・・


 「おいおい察しのわりぃガキだなぁ、てめぇみたいなガキは場違いだってことだよ。」


 その言葉に振り向くとどうやら近くのテーブルで様子を見ていたらしい巨漢の男が歩み寄ってきた。



  キューリアside


 今日も今日とてギルドのカウンターで仕事の真っ最中。今はマスターが会合の為留守にしているので、今は実質私がギルドを回している。本来はマスターのする仕事まで回ってくるのだから正直勘弁してほしい。ただでさえ忙しいんだから。ああ、早く帰ってきてくださいマスター。


 そんな感じで心中で愚痴りながらも表には出さず、受付で笑顔を浮かべて仕事に励んでいるとまた一人入ってくる人影を見つけた。普段なら大して気にも留めないけれど、入ってきたのがどうにも場違いな少年だったのだから話は別だ。おそらく歳で言うなら青年と言っていいくらいなんでしょうけれど、どうにも無邪気そうなその相貌で青年と言うよりは少年と言ったほうがしっくりくる。

 別に子供がここに来るのはそれほど珍しいことではなく、依頼を持ってくるなどのお使いでちょくちょく来る事はある。けれど今入ってきた少年は明らかにそうではない。その背に長剣を背負っているので明らかだ。

 そうこうしている内にその少年は私の目の前までやってきて、案の定と言うか、予想通りなことを言ってきた。


 「すみません。ギルドに登録したいんですが。」


 ああ、やっぱりと思いながらすばやくどう言い聞かせた物かと考える。確かにこのころの歳の子でもギルドで活躍するような子はいるにはいるが、それもほんの一握りだ。大抵はこのころの少年などに多く見られる純粋な羨望、ゆえに無謀な好奇心からくる無茶な挑戦。つまりは若さゆえの過ちがほとんどだ。私自身そういった何の覚悟もせず、ただ憧れに身を任せて、結果帰ってこなかった若者を数多く見てきている。まあ、結局のところそれは自己責任な訳なのだけれど、だからと言って気分のいいものではない。そういった無謀な若者を踏みとどまらせるのも私たちの仕事のうちだ。


 「ええと、確かに登録はできるけれど。君、ちゃんとここがどういう場所かわかってるかしら?依頼を受けるにしてもどれも危険が伴う物ばかりなのよ?」


 なるべく反感を持たせないように柔らかく言ってみる。こういった年頃の子は反感を持つと余計にむきになってしまうから注意しなければいけない。観察してみたところ服装はそれなりにいい素材が使われているらしい黒のコートを来ているが、背にさしてある長剣はおそらく近くの武具店で購入した物だろう。それも新品同様の物だ。もしかするとそれなりに裕福なお子様が好奇心から訪ねてきたと言う可能性が高まってきた。

 先ほどの言葉で考え直してくれればこちらとしても非常に助かるわけだが、生憎と目の前の少年は私が言ったことがどういう意味かまるでわかっていないらしく、可愛らしく小首を傾げる始末。これはなかなか強敵かしらね、と思っていると視界の隅から一人こちらに近づいてくる人影が映った。軽く視線を向けてみると巨漢の男。

 思わずあんたはオークか!と言いたくなるような巨体に申し訳程度にシャツを着たその男は、ギルドに所属している傭兵崩れの斧使いだ。それほど腕が立つわけではなく、力任せに愛用の斧を振り回すだけと言うよくいる脳筋タイプだ。そんなんだからもといた傭兵団をクビになったんだろうと思っていたが、当然口には出していない。これまた厄介なのが来たわね~と思っているとそいつは少年を見下ろしながら声を掛けてきた。


 「おいおい察しのわりぃガキだなぁ、てめぇみたいなガキは場違いだってことだよ。」


 うわ、この男。私が気を使っていたのを台無しにするんじゃないわよ!

 ・・・いや私もそこまで酷いことは考えていなかったわよ?

 そんな感じで馬鹿にしたように見下ろす男に少年が振り返る。


 「う~ん、そう言われても。確かギルドに参加するのに年齢制限とかはなかったはずだけど?」


 そういって困ったように笑みを浮かべて受け答えする少年。その様子に私は少しこの少年を見直す。容姿だけで言えばいかにも迫力のあるこの斧使いに向かって怯むどころか笑みすら浮かべて受け答えするなんて。度胸は据わっているみたいね。

 ただ斧使いのほうは見下したような様子から一変、少年の態度が勘に触ったらしく憤怒の表情へと変わる。


 「このくそガキがっ!人が親切に忠告してやったのになんだぁその態度はっ!」


 いや、あんた絶対親切心で言ったわけじゃないでしょうと心中で突っ込む。対する少年は変わらず困った風に苦笑いを浮かべている。怯んでいないのも変わらず。なんというか「なんだか怒らせてしまった、これどうしよう?」と言った感じだ。

 おそらくその態度が更に斧使いの神経を逆なでしたのだろう。いよいよ殺気立った男は背負っていた斧に手を伸ばした。って!!


 「(ちょっと、いくらなんでもそれは行き過ぎでしょっ)」


 ギルドでは特に私闘の制限や罰則などは設けていないが、流石にこんなところで始められてはたまった物ではない。斧使いは怒りのまま手にした斧を振り上げている。流石にカウンターのまん前で流血沙汰は御免なのでカウンターの引き出しに忍ばせてある小型の杖を手に取り斧使いを昏倒させようと______



 「おっと。」



 _____しようとした寸前、少年のなんとも気合の欠片もない一言が聞こえ、同時に斧使いの振り上げられていた手首を左手一本で押しとどめていた。



 ・・・・・・え?

 






 

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