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黒龍の御子  作者: taka
第一章 御子の旅立ち
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第1話 カルデラの箱庭

連続投稿その1です

次はお昼12時に

  エルシディア大陸

 広大な大地を有するこの大陸には多種多様な種族、生物や精霊と呼ばれる自然の意思や結晶と呼ばれる存在、魔物などと呼ばれる醜悪なものなど数多くの者たちが存在していた。

 種族が違えば文化、思想なども異なる。そのため異なる種族間では争いが絶えることがなく、たびたび戦争が起きていた。その過程でこの大陸にはいくつかの国が出来、現在は争いも沈静化し、一時の平和な時が流れていた。だが、その平和も危ういバランスの上に成り立っているにすぎず、一度その均衡が崩れればまた戦乱の世が訪れることは想像に難くない状況にあった。


 エルシディア大陸の北部、とある2つの大国の国境にそびえる大山脈、ユベルト山脈。ある特殊な環境ゆえ生物が生息することはおろか、足を踏み入れることさえ困難なその山脈地帯。その名の由来となった山脈地帯の中央にそびえるもっとも高い山、ユベルト山。その山頂付近には常に厚い雲が被い、山頂を目視することすら適わない、まさに魔の山。

 そんな魔の山の山頂、そのカルデラに広がる光景は、ユベルト山周辺の絶壁と豪雪と言う厳しすぎる環境からは想像すらできぬほど、穏やかな空間が広がっていた。

 これほどの標高に位置するにもかかわらず草木が生い茂り、片隅には湖があり、小鳥などの小動物まで生息していた。そんなカルデラに一軒の木造の家が建っていた。屋根からは煙突が伸び、煙が出ている。どうやら家の中で火を使っているようだ。


 木造の家から少し離れた、開けた場所で2つの影が交錯していた。

 片方は黒い上下の服装に身を包み、同じく黒いロングコートを着た歳のころ20代後半の男。目を惹くのはその男の相貌。精悍であり中でも鋭さの宿る漆黒の瞳に同じく漆黒の髪。腰まで伸びた髪を後頭部で結んでおり、男が動くたびその後を追うように宙を舞う。


 もう一方は男をそのまま小さくしたような、まさに瓜二つと言って良いような少年。まだ10歳ほどではあるが男と同じように、その瞳には力強い光が宿っている。が、一箇所、少年の左目だけが澄み渡るような蒼い光を宿していた。服装は男とは対照的な白の簡素な上下の服を身にまとっている。


 この二人がその手に木刀を持ち、切り結んでいた。

 少年の方は既に息が切れてきており、このまま闇雲に切りかかったとしても勝機はないと考えたのだろう。それ以上下手には動かず、男の隙を覗う。対する男は悠然と構えており、少年のように息が切れている様子も見られない。

 っと、突然少年の姿が掻き消えたかと思うと、次の瞬間には男の背後から現れ手にした木刀を振り上げ、


 「はあっ!」


 気合一閃。男の背に切りかかる。っが、少年の一撃は空を切る。渾身の一撃を外したことで体勢を崩すがすぐさま建て直し、男の行方を追おうとする。

 突然、辺りが暗くなり、反射的に上を仰ぎ見た先には、


 「・・・へっ?」


 視界を被いつくさんとばかりに、巨木もかくやといった巨大な何かが降ってくる光景があった。


 「うわぁああっ!?」


 思わず驚きの声を上げながら少年は空から降ってくる巨大な何かを避けるために決死の思いで横に跳躍。

 次の瞬間。


 ドゴーーーン!!


 振り下ろされた何かが地面に激突すると同時に辺りに轟音が響き渡る。それにあわせて暴風が吹き荒れ、何とか落下地点から逃れたが、いまだ滞空中だった少年はきりもみしながら吹き飛ばされた。何とか地面に着地してから振り下ろされたもの、巨大な尾に視線を向ける。漆黒の鱗に覆われた巨大な尾、その根元に視線を向けると先ほどの男が木刀を肩に担いで佇んでいた。漆黒の尾はその男の背後から伸びている。

 少年の視線に気付いた男は手を振りながら、


 「お~、よく避けたな」


 嬉しそうな、それでいて感心したような、そんなことを言った。


 「いや、いま本気で潰す気だったでしょ!?」


 そんな様子の男に少年は猛抗議。もう少しでペシャンコにされていたのだ。抗議もしたくなる。だが当の本人はどこ吹く風と言った風に少年の抗議を受け流す。


 「今のお前ならこれくらい避けられると思ったからな。現に避けられたんだから問題ない!」


 そう言ってカラカラと笑う。その様子に思わず頭を抱える少年。そういう問題じゃないと言おうとしたが途中でやめる。どうせ先ほどのように適当に流されるのがオチだと悟ったのだろう。追求を諦める。

 っと、木造の家の扉が開かれ、中から美しい蒼の瞳と髪の毛を携えた20前半といった風の女性がエプロン姿で出てきた。


 「二人とも~、そろそろ昼食の時間よ~」


 その声を受け、早々に引き上げていく男。先ほどまであった巨大な尾は既に掻き消えていた。男は女性の傍らまで来るとその腰に腕を回し、躊躇う事なくキスをした。女性の方も嫌がるそぶりを見せることなく、むしろ嬉しそうにそれを受け入れる。その様子にやれやれと言った風に苦笑した少年は服に付いた砂埃を手で払う。


 「ほら、リオスちゃんもいらっしゃ~い」


 「はーい!今行く!」


 そう言って二人の元へと駆けていく少年、リオス。



 これが後に<黒龍の御子>と呼ばれる少年である。




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