表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の御子  作者: taka
第一章 御子の旅立ち
16/35

第15話 町へと

 一階の散策もほぼ終了して二階へ移った。と言っても二階はほとんどが家の者の部屋と客室、執務室に書斎などで特に見るところも無かった。書斎に関してはいくつか読んでみたい書物があったので次の機会にでも見る事にしよう。

 そうこうしている内に日も高くなってきた。あらかた屋敷内は見たし、さてこの後どうしようか?と考える。そこでちょうど昨日この屋敷に来るまでに通ってきた大通りを思い出す。どうせだから外に出てみようかと考え付く。


 「なあユリア。屋敷の中も大体見終わったから外に出ようと思うんだが、爺さんに一応断った方が良いかな?」


 「外出ですか?そうですね。念のため御祖父様に断ってからの方が良いですね。もうそろそろ昼食の時間になりますが、その後に出られますか?」


 「いや、実はここに来る途中にいくつかお店に出されていた食べ物なんかを見てね、食べてみたいものとかあったから外で済ませるよ」


 それで今後の予定の方針が決まり二人で爺さんのいる執務室に行く。爺さんに外出の旨を聞いてみるとあっさりと承諾された。ただし俺の正体、この場合は黒龍云々だけでなくセルビアン家の者、要するに貴族である事は知られないようにと注意を受けた。つまりは身分を隠してのお忍びと言うわけだ。

 大体話がまとまった所でまたもやユリアが同行を申し出てくれた。朝からずっと付き合ってくれていたので流石に悪いと思い断ろうとしたが、


 「迷ったらどうするんですか?」


 と笑顔で問いかけられてしまい、あえなく撃沈。まあありがたいんだけれど。爺さんが影ながら護衛を付けるかと言ってくれたが流石にそれは遠慮した。流石にそれだとちょっと居心地が悪そうだし。それに何より俺って護衛いるのかな?一昨日遭遇した盗賊ぐらいならいくらいてもなんでもないし。

 そんな訳で俺とユリアは外出して町に行くこととなった。





 「・・・おぉぉ~~~!」


 大通りの入り口へと来た俺は思わず声を漏らした。屋敷に来るまでに一度は通ったとは言え、あの時は極力興味を引かれて寄り道しないようにと意識して周りをあまり見ないようにしていたため(とわ言ってもやはり色々と目に入ってしまってはいたが)こうして改めて見渡すと、なんとも声が洩れてしまう。そんな俺の様子を可笑しそうに後ろからユリアが見ている。

 今の俺たちは先ほどまで屋敷にいた時の服装ではなく、俺はいつも着ている黒のコートではなく灰色のマントを羽織って、ユリアは薄茶色っぽい毛糸で編まれた上下に俺と同じく灰色のマントを羽織った姿だ。何でも旅人を装っているらしい。


 「あっ、アレだ!食べてみたかったんだよね~」


 「へ~、面白そうだな。何に使うんだろう?」


 「おっ、服屋か。・・・へ~、色々あるんだな~」


 俺はあっちに行っては、こっちに行ってはとうろちょろとしていく。そんな俺を時に面白そうにクスクスと笑いながら、時に説明しながらユリアが後を追う。そんな事を繰り返しているうちにいくつか食べ物を買ったのでどこかで食べようと言う事になり、近くにあったお店の店先に外で食べられるようにとテーブルや椅子があるスペースがあったのでそこに腰掛ける。

 屋敷を出る前に玄関先でエルオーネから爺さんからとお金を貰った。母さんから貰っていたお金が手付かずだったため必要ないとも思ったが念のためにと持たされた。そんな訳で所持金が銀貨10枚、一万ゴールドとなった。とは言え無駄使いする気は無いので無闇に何でもかんでも買ったりはしなかった。いくつかの食べ物を買っただけだったので三百ゴールドほど使った。


 「おっ!これおいしいな!」


 買ってきたものの中から鳥肉を照り焼きにしたモノを選んで食べる。パリッとした皮と中の軟らかい肉がなんともおいしい。ユリアの話だと屋敷で出されているものはどれも素材が高価なものらしく、こういった店先で売られているものと比べると質事態は下がると言う事だが俺はこっちも負けず劣らずおいしいと思った。


 「ほら、ユリアも食べてみな。おいししぞ」


 そう言って向いに座るユリアにも鶏肉の照り焼きを渡す。それを受け取ったユリアはしばしそれを眺めた後、意を決したようにはむっ!と鶏肉を食べた。もぐもぐと食べているユリアの表情がやがて驚きから笑顔に変わっていく。


 「・・・おいしいっ」


 そう言ってユリアは鶏肉をどんどん食べていく。後から聞いた話だがユリア自身町に出た回数は少ないらしく、こうして店先で食べ物を買って食べた事にいたっては俺と同じく初めてだったらしい。

 そうしてしばらくの間俺たちは買ってあった食べ物をこれはおいしい、こっちも食べてみなとお互いにやり取りしながら食事を進めていった。


 「ふぅ~、いや~食べた食べた!おいしかったな~」


 「ふふふ、そうですね」


 買ってきたものを平らげて今は座っていた席の前にあった店で飲み物を買いそれを食休みがてら飲んでいる。屋敷での食事は確かに美味しかったが、こうして気兼ねなくおしゃべりしながら食べるのも良いなと思いながら傍らの通りを通る人の流れを眺めている。こうして見ていると色々な種族が行きかっているのがわかる。一番多いのはヒュースト族、それから獣人種である猫人族や狗人族、他にも数は少ないがドワーフ族など多種多様な人々が行きかっている。荷物を運んでいる大きなゴーレムを見た時は流石に驚いたが・・・。


 飲み物も飲み干し、さて次はどこに行こうかと考える。ちょうどその時視界の隅に映ったある建物に目が行く。というのもちょうど俺の視線が向ったときにその建物のなかに数人のなにやら厳つい人たちが入っていくのが見えたからだ。その建物を観察してみる。一見酒場のような造りに見えるが看板が酒場のものではなく剣を加えた狼のエンブレムが彫られたものが掲げられている。


 「なあユリア、あそこの建物はなんなんだい?」


 そう言って件の建物を指差す。


 「アレは冒険者ギルドですね」


 冒険者ギルド?確か母さんから何か聞いていた様な気がしたけど何だったかな?首を捻っている俺にユリアが説明してくれた。


 「冒険者ギルドというのは名前の通り冒険者や賞金稼ぎなどを生業にしている人たちが所属するギルドです。ギルドは人々からの依頼などを統括して冒険者や賞金稼ぎなどにその依頼の仲介を行い、依頼者からの報酬のいくらかをギルドに納め、残りの分を冒険者や賞金稼ぎに成功報酬として払います。依頼は普通の人から貴族まで多種多様でモンスターや盗賊の討伐、罪人の捜索などもあります」


 ユリアの説明を聞いて思い出した。確かユリアの説明してくれた他にギルドはその地の貴族などとも対立する事もあれば利用し、される間柄でもあるらしい。なるほど、という事は先ほど入っていった人たちは冒険者か賞金稼ぎというわけだ。

 興味を引かれたがユリアもいる事だし、今回は入る事はしなかった。またの機会にでも覗いてみることにしよう。その後ユリアと一緒に大通りを一通り見て回った頃には日もだいぶ傾いてきたので今日のところはこれくらいにして屋敷に戻る事にした。


 「どうでした兄さん。初めての町は?」


 「はははっ、楽しかったよ。屋敷に来る途中にも通りはしたけど、あの時はろくに見たり出来なかったからね」


 そんな風にユリアと他愛ない事を喋りながら屋敷の門前まで来た時、中の屋敷前に二台の馬車が止まっているのが見えた。


 「あれ、もしかしてお客さんかな?」


 俺の言葉にユリアも気が付き視線を馬車に向ける。しばらく馬車を観察していたユリアは唐突に首を横にふる。


 「いえ、客人ではないようです」


 客人じゃない?じゃあ一体?


 「・・・予定より早かったようですね。兄さん、どうやら帰ってきたようです」


 ・・・・・・あっ!もしかして、


 「王都に出向いていた他の家族、セルビアン家の者たちです」



 ユリア、爺さんと来てどうやらこれから残りのセルビアン家の人間、俺にとっての叔父や伯母たちとの邂逅となるようだ。


 

感想などお待ちしています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ