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黒龍の御子  作者: taka
第一章 御子の旅立ち
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第13話 手合わせ



 部屋からポーチを取りに戻ってからユリアの元に戻る。裏庭の広場に戻ると、椅子に座っていたユリアが俺に気付き立ち上がってこちらに歩み寄ってきた。


 「悪い、待たせたね」


 「いえ。それでどうしたんですか?」


 「うん、せっかくだから手合わせしようと思ってね」


 そう言ってポーチから一振り、剣を取り出す。魔法付加できる方だ。そういえばまだ二振りとも銘を考えていなかったっけ。そのうち考える事にしよう。父さんは何も言っていなかった事だし俺が考えても問題ないはず。

 俺は一度空を切り払ってからユリアと少し距離を置き対峙する。対するユリアは驚いた表情を浮かべたが、すぐさま立ち直り俺と同様に距離を置いて剣を構える。


 ユリアは自身の右手に持つレイピアを俺に真っ直ぐ向けるように構え、俺は右手に持つ剣の剣先が地面すれすれと言うところまで降ろしてほぼ自然体、若干体を右に開く形で佇む。

 しばらくはお互い動かなかった。が、


 「・・・・・・っ!!」


 ユリアが先に動いた。俺に向って距離を詰め手にしていたレイピアを自身の後方へ引き絞り、


 「はぁっ!!」


 俺に向って刺突。距離を詰めるところから攻撃までなかなかの速さだ。5メートルほどの距離をほとんど一息で詰め、刺突までの流れも悪くない。

 俺の右肩を狙った刺突をぎりぎりまで引き寄せてから、軽く右足を引く事で体をそらしてかわす。が、すぐさま切り払いが飛んできたので後方に跳躍して退避。うん、いいね。はじめの刺突をかわされてもその隙を突かれないようすぐさま切り払い、相手の反撃を封じる。ユリアの現状を考えるとおそらくこうして剣で相手と対峙するのは初めてのはず。だと言うのに戦闘の組み立てがキチンと出来ている。今までたんに剣を振るだけでなく、ちゃんと相手を想定してきたんだろう。


 再び距離を置いて対峙する。今度は俺から仕掛けようと考え、先ほどのユリアの全体的なスピードを考え、反応できるぎりぎりだろうスピードで距離を一気に詰める。


 「っ!?」


 俺がすぐさま目の前まで迫った事に一瞬驚いたようだが、振るわれる俺の剣にすぐさま反応。右下からの切り上げを右に飛ぶ事でかわす。と、即座に剣を振りぬいた俺の無防備な右半身に向って刺突を繰り出してくる。今度は体全体を使った突撃ではなく、手数を武器とした連撃。俺の体の中心を基点にランダムに繰り出される。


 「っ!っ!っ!」


 繰り出されるごとにユリアの声にならない息使いが気迫とともに聞こえてくる。その連撃を時に体を反らし、時に剣の刀身で弾き、反らしてしのぐ。

 このままでも押し切れないと踏んだのだろう。ユリアはここで連撃から一転、俺の剣の刀身に向って刺突を繰り出してきた。それを受け俺の剣が上方に弾かれる。


 「やぁーっ!!」


 それを見逃さず裂帛の声とともに渾身の刺突が繰り出される。その刺突は俺のちょうど体の中心、胸へと・・・。


 「っ、えっ!?」


 吸い込まれると思われた直後、ユリアの前から俺の姿が掻き消える。ユリアの一撃はちょうど俺のいたぎりぎりの所で止められている。ちゃんと寸止めできるんだ。感心感心。

 突如として掻き消えた俺に呆気にとられているユリアの様子を背後から見ていた俺はその首筋に剣を添える。


 「っ!?」


 それに思わずと言った風に体を強張らせるユリア。いやまあ無理も無いけどね。ちなみに怪我しないように刃の潰れている方でやってるので安全。


 「はい、勝負ありだね」


 「・・・ふぅ。はい、参りました」


 その言葉を聴いて構えていた剣を互いに降ろす。うん、なかなかいい手合わせだった。何気に俺は父さん以外とこうして剣で手合わせするのは初めてだ。もっともユリアはそもそも剣での手合わせ自体が初めてだろう。それでこれか。すごいな~。

 そんな事を思っているとこちらを向いたユリアがなぜかジト目で見てきていた。あれ?ひょっとしてやりすぎた?


 「・・・兄さん最初は手加減していたんですね」


 「ん?いや、手加減と言うか、初めての相手との手合わせだったし。ユリアの腕を見るために受けに回っていただけだよ。それにしてもユリアは強いね、今回の手合わせって剣では初めてだろ?」


 そう聞いた俺に頷くユリア。やっぱり初めてか。それであの戦いっぷりって・・・。おそらく魔法での戦闘経験は訓練などであるんだろうけれど、それを差し引いても凄いな。


 「兄さんが強いのはわかりましたけど、私は強いのでしょうか?」


 「俺もそれほど戦闘経験は無いけど、ユリアは結構強い部類に入ると思うよ」


 俺が今までに見てきた武器の使い手だと、父さんを除けば、ここに来る途中に遭遇した盗賊とハンスさんたち、それとこの屋敷の警備の兵士さんたちだけど、その中ではダントツでユリアが一番だ。

 ・・・あれ?ここの警備の兵士さんたちより強いっていいのかな?いや強いに越した事は無いからいいのか。


 「まあ、俺と同様比べられる相手がいないからね。・・・あっ、そうだ!良かったらこれから俺と訓練する?相手になれるよ?」


 「良いんですか!?」


 うおっ!凄い食いつきだ。俺の提案を聞いてユリアが飛びつかんばかりに俺に接近。ユリアさん?近いんですけど?


 「あ、あぁ。いいよ。俺も相手がいてくれたほうがいい練習になるし」


 「はい、よろしくお願いします!」


 そう答えた俺に嬉しそうに返事をするユリア。ここに来て一番嬉しそうな笑顔を見れたので言ったかいがあったなと思った。っと、なぜか一転してユリアの表情が曇りだした。どうしたんだろう?


 「・・・兄さんは私が剣を持つ事をどう思いますか?」


 そんな事を聞いてきた。おそらくセルビアン家の魔道士輩出などの背景の事だろう。魔法に秀でた家、更に才能もあると言うのに剣の道に進みたいと言うユリアは傍から見れば異端なのだろう。彼女自身その事が解っている故の質問なのだろう。


 「ん~、俺としてはどうとも思っていない・・・って言うのは違うな。ユリアの思うようにするのが一番いいと思うよ。」


 「え?」


 俺の言葉を受けて俯き気味だったユリアが顔を上げる。


 「これは俺の父さんの受け売りなんだけどね。自分の思うがまま、感じるままに、自らの信じる道を進めばいいっていうものなんだけどね。俺はその通りだと思っているんだ。自分の進む道は自分だけのもの。それを他の人に強制されて進むべきじゃないと思うんだ」


 そう言ってユリアの頭の上に手を置く。


 「だから俺はユリアの思うようにするといいと思うよ?ユリアが剣を持ちたいというなら俺はそれを応援するよ」


 言いながらユリアの頭を撫でてあげる。対するユリアはとても驚いたように目を見開いている。そんなに驚く事かな?しかも次第に目が潤みだしてぽろぽろと涙が・・・・・・って、えぇ!?


 「っちょ、えっ!?お、俺なにか悪い事いったかな!?あ、え?ユリア、な、泣かないでくれ!」


 いきなり涙をぽろぽろと流しだしたユリアに流石に仰天してしまう。俺がおろおろしているとユリアが軽く自分の頬を手で触る。


 「え?・・・あ、私、泣いて・・・」


 どうやらユリア自身涙を流していた事に気付いていなかったらしく慌てたように涙を拭うが一向に涙が止まらない。


 「あ、あれ?へ、変ですね。どうして・・・」


 ど、どどどどどうしようっ!?ユリアを泣かせちゃった!?こういう時ってどうすればいいんだ!?

 俺の目の前で未だに泣き続けているユリアをどうやって泣き止ませばいいのかわからない。え~と、こういう時は、え~と。・・・あっ!そうだっ!!

 一つの事を思い出した俺はすぐさまそれを実行に移す。


 「・・・え?あ・・・」


 具体的にはユリアを抱きしめた。俺が昔怪我をしたりして泣いていたときに母さんが俺を抱き寄せて頭を撫でてくれたのを思い出したのだ。泣いている人を泣き止ませるなんてそれくらいしか思いつかなかった俺はそれを実行。ユリアとは体格差があるため、すっぽりと俺の腕の中にユリアが納まる形になった。それから出来るだけ優しくユリアの頭を撫でてやる。


 「・・・・・っひぐ、う、ぐすっ、・・・う、うぅぅ~」


 始めは驚いていたようだが、やがて俺の服を掴みながら腕の中で泣き出した。そんなユリアの頭をただひたすらに撫でてやる。

 しばらくの間、裏庭の広場にユリアの嗚咽が静かに響いていた。






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