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黒龍の御子  作者: taka
第一章 御子の旅立ち
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第12話 私の従兄


  ユリアside


 御祖父様から直接その話は聞かされた。これは我がセルビアン家のみならず、ひいてはノスティーア王国の重大な秘密であり、決して口外してはならないと。

 それは私の伯母に当たる人が黒龍に嫁いだと言う事実だった。それを聞かされた私は一瞬何を言われたのか解らなかった。


 黒龍?あの幻獣族最強と言われている?


 私の中では、と言うよりも大部分の人がそうだろうけれど、黒龍とはまさに伝説と言っていい存在。それこそ御伽噺に出てくる過去の勇者と呼ばれる人物や魔王と呼ばれた最凶の魔族と同列、いやそれ以上と言っていい、まさに夢、幻の存在。

 だがその存在は人々の中に力と恐怖の象徴として、確かに君臨しているのだ。


 そんな出鱈目な存在が私の伯父にあたる?


 何の冗談だろうとその時は本気で思った。が、その思いも虚しく、事実だと御祖父様の口から聞かされた。更に驚いたのは、どうやらその二人の間には子供がいるらしく、私からすると従兄に当たるらしい。次から次に聞かされる衝撃の事実に頭がパンクしそうになる。

 幾分落ち着いた私に御祖父様が詳しく事の経緯を説明してくださった。何でも私の伯母に当たるロレーン伯母様が黒竜ガラバルト伯父様(この敬称でいいのでしょうか?)に見初められ結婚。まもなくして混乱を嫌ったガラバルト伯父様はロレーン伯母様を連れて家を出たと言う。

 だが数年後、一度だけこの屋敷に戻ってきた時にお二人の子も連れて帰られたらしい。それが私の従兄にあたる人。

 いくつもの衝撃の事実を聞かされた日の夜、ようやく落ち着いてきた私が思ったのは、その私の従兄に当たる人は一体どんな人なのだろうということだった。今の私にも従兄、そして従姉はいるのだが、正直関係は良好とは言えない。貴族の家に生まれた者としてはそれは仕方の無い事と諦めてもいたのだが・・・。


 「一体どんな人なんだろう・・・」


 そう漏らした私の疑問は、その数年後、思わぬ形で解る事となる。





 この数日、私と御祖父様以外は王都へと出ていたため、その日の朝もいつも以上に剣の訓練が出来た。それ以外には特に代わり映えしない一日になるはずだった。のだけれど・・・。

 部屋にいた私は外が騒がしい事に気付き、専属のメイドを呼び何が起きているのか聞いてみると、この敷地内に何者かが侵入したと言う事がわかった。

 警備の兵士は何をしているのだろうと思ったが、すぐさま思い直す。


 「・・・仕方の無い事ですね」


 そう呟いた私はすばやく右手の中指にはめられた魔法発動体の指輪を確認して、適当な本を持ち部屋の外に出る。途中メイドや執事たちに外は危険だと止められたがそれを無視して外へと出る。正直警備の兵士たちでは心もとない。侵入者の狙いはわからないが、この家の娘である私が目の前に現れれば、それを放って置くとは考えずらい。それを利用して侵入者をおびき寄せ、現れたところを魔法で迎え撃とうと考える。これまで魔法の訓練はかなりの頻度でしてきている為、ただの賊などには遅れをとるつもりは無い。


 たどり着いたのは屋敷の裏にあるベンチ。そこに腰掛け持ってきていた本を開くが当然読んではいない。目線は本に落としているが神経を集中させて周りの気配を探る。家の者に隠れて剣の訓練をするうちに気配に敏感になり、今ではこうして周辺の気配探知まで出来るようになった。思わぬ副産物だが今までにもこの技能には大いに助けられている。


 そうしてしばらくの間気配を探っていると変化が起きた。私から見て正面よりやや左手の木の上、僅かに人の気配がした。おそらく今のように気配探知に集中していなければ気付けなかったと思うほどに小さな揺らぎ。


 「・・・っ。そこにいるのは誰ですか!?」


 叫びながら立ち上がり、魔力を練り上げアイススピアを展開。即座に放つ。が、その一撃はかわされてしまう。そこで私は少なからず動揺してしまう。今放ったアイススピアは私の扱う魔法の中で展開から放つまででもっとも早い魔法。それをこの距離でかわされてしまったという事は、少なくとも下手に動く事はできない。もしも次に放った魔法もかわされた場合、一気に距離を詰められる可能性も否定できないためだ。とりあえず牽制のためにも再びアイススピアを展開する

 レイピアをもって来るべきでした。今更ながらそう思う。この騒動を剣で解決すれば幾分かは皆の意見を覆せるとも考えたが、やはり楽観的過ぎると思い、ここはまだ隠しておくべきだろうと判断したのが仇になってしまった。

 思わず苦い思いを抱くが今はとにかく目の前の侵入者に集中しなくてはと、改めて正面の侵入者へと目を向ける。





 「改めて思い出すとめちゃくちゃな出会いですね」


 初めて兄さんと出会った昨日の出来事を思い出し、思わず苦笑が出る。結局その後兄さんが誤解により屋敷の敷地内に侵入した事が発覚して騒動は治まった。兄さんにも言ったけれどあの時私に会っていなかったら更に面倒な騒ぎになっていただろう。兄さんにはもう少し考えて行動するようにと改めて言っておいたほうがいいだろうか?と思う。

 まだ会って1日と経っていないわけだけれどどうやら兄さんは悪い人ではないみたいです。最初に感じた印象は外見よりも子供っぽい人と言うもの。失礼な事だがそれが素直な感想。でもけして悪い印象ではない。先ほどの私が剣の稽古をしていた事を黙っていて欲しいとお願いした時も、条件などと言いつつも結局は私と気兼ねなく話したいと言うのが直ぐにわかった。


 純粋な、そう。純粋な人なんだ。


 なんとなくではあるが兄さんの本質がわかったような気がした。黒龍の血を引いているからと、一体どんな人なんだろうと思っていたけれど、何も恐ろしい事も無ければ、傲慢だったりする事もない。これならきっといい関係が築けると素直に嬉しく思えた。


 そういえば兄さんは私が剣を持つ事をどう思っているんだろう?先ほどは聞くことが出来なかった。黙っていてくれるようなので、今すぐやめなさいと言われる事は無いと思うけれど・・・。



後で兄さんに聞いてみよう。そう思っていると屋敷の方から走ってくる兄さんが見えた。






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