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黒龍の御子  作者: taka
第一章 御子の旅立ち
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第10話 とるべき道は?


 「・・・さ・、・・スさま」


 コン、コン。

 なにやら規則正しい音と共に誰かの声が聞こえてくる。薄っすらと目を開けたところで布で出来た天蓋が目に映る。それを見て俺がこのセルビアン家で与えられた部屋のベッドで寝ていた事を思い出す。


 「リオス様、夕食の準備が整いました」


 扉の向こうからエルオーネの呼ぶ声が聞こえてくる。


 「っと、はい。今行きます!」


 思っていた以上に疲労がたまっていたらしい。窓から見える外の景色は既に夕暮れだった。すぐさまベッドから飛び起きて椅子にかけていた上着を引っつかみ、羽織ってから扉を開く。


 「すみません。ちょっと寝ていたもので」


 「いえ、それではご案内いたします」


 そう言ってエルオーネが先導してくれるのに付いていく。歩いているうちにぼんやりしていた頭も醒める。そのまま一階に下り、大きめの扉の前までたどり着く。


 「どうぞ、お入りください」


 そう言ってエルオーネが扉を開いてくれる。中に入ると玄関ホールほどではないが広い空間が広がっっており、その中央に一際長いテーブルが置かれている。

 そのテーブルの奥に爺さん、少し間を空けた横の位置にユリアが座っている。後ろで扉を閉め、傍らを通って行ったエルオーネさんに促されて俺もテーブル、ちょうどユリアの向かいの席につく。わざわざエルオーネが椅子を引いてくれたのには少々面食らったが・・・。


 「ふむ、揃ったな。では、食事にしよう」


 爺さんがそう言って食事が始まる。のだが・・・。

 爺さんの後ろにはエルオーネを含めたメイドさんたちと、執事さん?たちがずらっと並んで控えている。更に俺とユリアの後ろにも一人ずつメイドさんが控えているようだ。正直言って食べづらい。母さんからはマナーなど習ったときにこういうものだとは聞いていたが、実際体験してみるとどうにも居心地が悪いな・・・。


 「・・・?どうかしましたか?」


 「へっ、あ~。いや。なんでもないよ」


 俺の様子を不審に思ったのだろう。正面に座るユリアが声を掛けてきたがとりあえずはごまかしておく。そうしてちょっと慣れない食事を進めていく。

 ちなみに料理は肉をメインにしたものでとてもおいしかった。

 

 そうして食事が終わり、食器を傍らに控えていたメイドさんが下げていく。すぐさま違うメイドさんが持ってきたカップが置かれ、紅茶を注がれる。

 それを確認した爺さんがエルオーネに目配せをし、それを受けたエルオーネが指示を出し他のメイドさんや執事さんたちが退出していく。残ったのは俺に爺さん、ユリアにエルオーネのみ。つまりは俺の素性を知るもののみになったということだ。ちょうど良かったのだ先ほどから疑問に思っていた事を聞いてみる事にした。


 「なあ、じいさん。ほかの人たち、家族はいないのか?」


 「ん?ああ、今この屋敷にいるのはワシとユリア、他には使用人のみだ。他の家族たちはそれぞれセルビアン家としての職務で外に出ておる。おそらく数日中には戻ってくるだろう」


 そう爺さんが俺に説明する。何をしているのかまでは聞かなかったが、どうやら皆ノスティーア王国、王都へ出向いているらしい。ちなみにユリアだけなぜ残っているかと言うと、今回の王都での用はユリアにはまだ早いと判断され留守番を言いつかったらしい。


 「・・・ではリオスよ。お前さんの今後についてだが」


 爺さんからそう切り出された。


 「ロレーン、お前さんの母さんの手紙に大体の経緯は書かれていた。今回のお前さんの旅立ちについてもな。・・・まあ、どうするのか。最終的にはお前さんが決める事なのだが、お前さんにワシからの視点で今後のお前さんのとる行動、それによって起こるであろうものについて話してくれと手紙にかかれておったのでな。まずはその話からしよう」


 そう言って爺さんは俺がとった行動によりどのような事がおきるのか、その大まかな話を聞かせてくれた。


 「まず、これが大前提なのだが。お前さんはガラバルト殿、つまり黒龍の血を引く者だ。これにはおそらく今お前さんが考えているであろうものよりも、遥かに影響力があると言う事だ」


 俺に流れる父さんの血。黒龍の名はまさに絶大な影響力を及ぼすと言う。恐怖、崇拝、絶望、羨望、狂気、渇望、ありとあらゆるモノを引き寄せる。善悪問わず、俺が望もうと望むまいと・・・。

 故に爺さんは俺の正体は隠す事。これは前提条件になるだろうとのこと。もし話すとしても、それは本当に信用に足る人物のみであり、それ以外では決してもらしてはいけない、とのことだ。


 「さて、これを踏まえた上で、お前さんが取る道は大きく分けて三つ」


 一つ、このままここ、セルビアン家の者として、つまりは貴族として世に出ると言う事。当然王国の一部の者は俺の正体は知っているだろうが、父さんと協定を結んだ先代国王の命で緘口令が敷かれているため、そこから俺の正体が洩れる事はおそらくないだろうと言う事だ。


 二つ目は貴族としてではなく、一個人としてこの世界で生きていくと言う事。しばらくの間はセルビアン家でサポートして貰い、やがては自身の思うまま、世界へと旅立つと言う事。


 そして三つ目は、とりあえずこの世界の事を知らないと言う事から、このセルビアン家周辺を拠点とし、色々なものに触れ、しかる後取る道を決めると言う、いわば保留期間というもの。


 「今わしが思いつくのは大まかにこれだけだが、お前さんは他に何か考えがあるか?」


 「いや、俺も爺さんの上げてくれた考えだけ。三つ目の保留はなかったけどね」


 爺さんが提案してくれた三つの案について考える。のだが、やはり今の俺ではそもそもの判断材料が少なすぎると言うのが一貫して思う事だ。


 「・・・まあ、直ぐに決める必要もない。しばらくはここで生活しながら、これからどうするかを決めればよい。お前さんの今後を大きく左右する選択だ。よく考えなさい」


 その爺さんの言葉で今夜の夕食兼俺の今後についての話し合いはお開きとなった。


 割り当てられた部屋に戻った俺はベッドに横になりながら考える。これから俺はどうすればいいのか?どうするのがいのか?そんな事を考えながら波乱続きだった一日の夜は更けていくのだった。


 

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