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夢と現実とわたし
小さな音がした。
それが、冷たい鎖の音だと気付くのに、さほど時間はかからなかった。
何しろ、それは私の腕を壁と繋いでいたのだから。
床は冷たかった。
当然だ。明かりとりの鉄格子からは容赦なく冷気が差し込んで、薄暗い部屋を支配しているのだから。
私は膝にかけられている布が、見憶えのあるマントだということに気がついた。まるで現実味のなかった光景が、マントのお陰で急に蘇ってきたようだ。
身震いをして、よくもこんな場所で生きていたものだと実感する。
きっと、優しい夢を見られるおかげだったんだろう。
そう、ここは、冷たい冷たい牢屋なのだから。




