手紙 ~往路~
拝啓、お父さんお母さん、ついでに不肖の弟。
お元気ですか。
私が、突然いなくなったことに、あなたたちは気が付いているでしょうか。
それとも、大騒ぎになっているでしょうか。
どちらにせよ、私が今居る場所はすぐに戻れる場所ではありません。
信じられないかもしれませんが、私は今、異世界に居ます。
とある人の交通事故に巻き込まれる形で異世界に飛ばされる羽目になってしまいました。一緒に読んでいるであろう弟が爆笑しているのが目に浮かぶようですが、決して嘘ではありません。
異世界という未知の土地ですが、心配しないでください。
ちゃんと人が住んでいます。
人は住んでいますが、私は相変わらず散々です。
騙されたり裏切られたり、それが日常茶飯事です。
でも、ちゃんと助けてくれる人も大勢います。
その人たちのおかげで、私は生きています。
この世界は、とても広くて、とても奇麗なところです。
私は今、たくさんの人たちの支えもあって、こちらから帰れる手段を探しています。
どうやら、私は特殊な体質のようで、すぐにそちらへ帰ることができないようです。
ですから、この手紙をそちらへ帰る人に託します。
ステファンという男の子です。
彼は、十歳の時に私と同じように異世界に迷い込んだ人です。
彼はとても誠実なので、きっとこの手紙を届けてくれるでしょう。
私は、必ず帰ります。
それから、最後になりましたが、私は元気です。
そちらもお元気で。
敬具
葉子