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波とみんなとあの人と
ゆらゆらと、波に揺られていた。
それは温かいというのに、私は指一本動かすことができない。
きっと、みんなが怒っているからだろう。
いつもは怒鳴ったりしないあの人も、怒ったように私を抱きあげたのだから。
あのお姫様は、もう泣いたりしていないだろうか。
俊藍には悪いことをした。
きっと、私のせいで全部台無しだ。
本当に、どうして私はこうなんだろう。
ごめんなさい。
謝ってもしょうがないことだと思うけれど、口にせずにはいられないことってあるんだよ。
ごめんね。
ああ。
あの人は。
あの人は泣いていないだろうか。
私と約束をした、あの人は。