表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「身も蓋も無いこと」がトレンドなのだろうか。

作者: ムクダム
掲載日:2026/04/25

 世の中の動きや流行の作品などを眺めていると、このように感じることが多い昨今である。「身も蓋も無い」とは、あまりに露骨すぎて情味もうるおいもないという意味である。「それを言っちゃあ、おしまいよ」という某映画の有名なセリフと似たようなイメージである。


 最近の顕著な例は、アメリカ合衆国の民主的な選挙で選ばれた大統領の言動だろう。真っ当な知性を持った人間であれば頭に浮かんでも口に出さないような言葉を垂れ流し、良心があれば頭をよぎっても現実には実行しないような行動に出ているという印象がある。

 ただ、これはかの大統領個人の問題というよりは、社会全体、世界全体の傾向として捉えた方がしっくりくるように思える。ああいった人物が、曲がりなりにも選挙によって多数の人に支持されるということはそういうことであろう。間違った道でもみんなで渡れば怖くない、というのは民主主義の否定できない一側面である。


 外国の話であると高を括ってもいられない。極端な主張、悪目立ちをするような言動をとる人物が決して少なくない支持を受けるというのは、私たちの社会でも観察される事象である。

 政治、特に選挙を例にするのが普通かもしれないが、個人的にはもっと日々の生活に密着したもの、趣味・嗜好の分野で観察してみた方が得心がいくように思える(もちろん政治も日々の生活に直結しているのだけれど)。


 漫画や小説について言えば、過度な残酷描写や、物事を決めつける偏見としか思えないような主張を臆面もなく押し出すものが増えているように思える。

 過去にそういった作品がなかったと言いたいわけではない。何なら、今より過激な描写、口に出すのも憚られるような主張を繰り出している作品があったことも知っている。

 ただ、過去のそういった作品においては、後ろめたさというか、少数派としての意地のようなものが感じられるのに対し、今の作品には開き直ったような態度、正当性を疑わない傲慢さが透けて見えるようで、何とも落ち着かない気持ちになるのだ。無邪気、無頓着と言っても良いのかもしれないが、本来あるべき箍が外れているような危うさが漂っているように思える。


 かつては、恥ずべきこととして口に出そうとも思わなかったこと、倫理的に表に出すべきではないと判断されていたことを、あえて曝け出すことで注目を集め、利益を得ようという魂胆があり、刺激を求める人々はそれに追従してしまう。誰もが頭の中で思い描いたことはあっても、それを外に向けて発信することを押しとどめていたもの、抑制や倫理といったものが、短絡的な儲け主義や虚栄心によって後ろに追いやられているのが今の社会の状況では無いだろうか。


 一昔前なら「馬鹿」と断じられ疎まれていたものが、むしろ「天才的」だと褒めそやされる社会。他人がやらなかったことをやるだけで価値があると勘違いしてしまう愚かしさ。なぜ他人がそれをやらなかったのかを顧みないそそっかしさ。現在私たちの生きている時代はそのようなものが大手を振っていた愚かな時代だと、将来顧みられることになるのではないだろうか。


 将来のことなんて知らない、自分が生きている間に良い目を見られれば問題ないという人は、人間という種族が背負っている時間というものの恐ろしさに無頓着なのだ。肉体的なものだけでなく、時間の積み重ねによって歴史、文化を形づくり、精神的なものを次代に繋いでいくのが人間という種の特徴であるとすれば、良きものを作り出すことが出来なかった、あるいはその誕生を邪魔していたという気持ちは何よりも大きな後悔として、人生のどこかで自らに襲いかかってくるように思える。それに直面することは人生で一番の恐怖ではないだろうか。終わり


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
検閲なしに、いきなり自分の意見を世界に直接放流できるようになった世の中の弊害ですね。 かつては、ある程度は機能していた「バカにかけるフィルター」が、自己検閲すらなしに、世界へ。 そして、本来は憚(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ