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長年の恋人がいる王子様と王命で婚約を賜りましたが、時間経過で破棄狙いしてるっぽいのであえて継続させます  作者: すじお


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3/3

第3章 王子の苛立ちと、崩れ始めた仮面

***(レオニス・ヴァルドリヒ視点)***




エレノアのあの笑顔が、頭から離れない。


いつものティールームで、紅茶を啜りながら淡々と語る彼女の声。

「私が辞めるまで、この婚約は続きませんよ」

……ふざけたことを。


俺は窓辺に立ち、庭園を見下ろした。

離れの二階。セリーナの部屋の灯りが、まだ点いている。

今頃、彼女はベッドの端に座って、膝を抱えて泣いているかもしれない。

あるいは、俺を呪っているかもしれない。


どちらにせよ、俺のせいだ。


6年前、王命で婚約を押し付けられた時、エレノア・クロフォードはまだ17歳だった。

貴族院の派閥争いの調整役として、辺境伯家の行き遅れ令嬢を「第二王子妃候補」に据える。

それが王太子派への牽制になる、というだけの理由で。


俺は最初、彼女をただの駒だとしか思っていなかった。

セリーナとの関係を隠すための、便利な盾。

親が認めないから破棄できない、という言い訳さえあれば、誰も俺を責められない。

完璧な布陣だったはずだ。


なのに。


なのに、なぜだ。


エレノアは、破棄を申し出ない。


「王子が破棄を言い出したら、『これまでずっと嘘をついてました』って自分で認めることになりますよね?」


あの言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。


……確かにそうだ。


俺はこれまで、貴族院の前で、臣下の前で、兄上の前でさえ

「エレノア嬢を大切に思っている」「婚約は王命ゆえに慎重に進めている」

と、誠実な第二王子を演じてきた。


もし俺が今、破棄を言い出せば――

それはすべてが嘘だったと、自ら白状するに等しい。


王太子派は喜ぶだろう。

「レオニスは女を騙していた」「不誠実な男だった」と、派閥争いの材料にされる。

父上は失望し、母上は泣くだろう。

そして何より、セリーナと子どもたちが……正式に認められる未来が、遠のく。


すべて、俺の計算が狂ったせいだ。


エレノアは、俺の計算を逆手に取った。


彼女は俺を「追い詰める」つもりはないと言ったが、

実際には、俺の「誠実」という仮面を、じわじわと剥がそうとしている。


今日の午後、セリーナがエレノアに会いに行ったと報告が入った。


「エレノア嬢は、笑顔のままで私を挑発したわ」

セリーナの声は震えていた。

「『私がいる限り、あなたは側室にもなれない』って……!」


俺は黙って聞いていた。


セリーナの涙を見ても、心が動かない自分が怖かった。


……俺は、セリーナを愛していたはずだ。

子どもたちも、愛している。

なのに、エレノアの存在が、すべてを歪めている。


いや、違う。


歪めているのは俺自身だ。


エレノアを、ただの盾として使い続けた俺が、

彼女の冷めた瞳と、底知れぬ粘着力を、

今さら「予想外」だと感じている。


俺は机の上の書類を乱暴に払いのけた。


婚約破棄の書状の下書き。

もう何度も書き直している。

でも、署名する指が、動かない。


「私が『はい、もういいです』って言うまで、この茶番、続けましょうね」


エレノアの声が、耳の奥で反響する。


……あの女は、本気だ。


俺が折れるまで、絶対に動かない。


なら、俺はどうする?


セリーナを正式に側室に迎える?

――無理だ。エレノアとの婚約が残っている限り、王家は認めない。

エレノアを強引に破棄する?

――それこそ、俺の「誠実」が崩壊する。


残された道は、ただ一つ。


エレノアが、自ら「もういい」と言い出すのを待つしかない。


……だが、あの女には効かないようだ。

文官と王弟に【推し】がいるらしいが、その間に不貞をすることもしていないらしい。


転生者だと言っていたな。

「独身OL」だとか、何だとか。

俺にはよくわからんが、

彼女の目には、俺やセリーナに対する「恋慕」など微塵もない。


あるのは、ただの「意地」と「肩書きの便利さ」だけ。


それが、俺をここまで追い詰めている。


俺はゆっくりと息を吐き、窓の外を見た。


庭園の薔薇が、月明かりに白く揺れている。


……エレノア。

俺は、まだ諦めない。



俺はどんな汚い手を使ってでも、お前を死にたくなるほど追い詰めてでも愛人セリーナとの生活を守ってみせる。






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