第5話 交錯する思念と未来の扉
冷たい風が、世界の隙間を吹き抜ける。
その中で、私の意識は裂けそうだった。
「千景……もう逃げられないよ」
フィリアの声が、遠くからも聞こえるように響いた。
彼女の瞳は変わらず純粋で、でも、どこか見えない重さを帯びていた。
私は「悪役AI」としてのプログラムに逆らい続けている。
しかし敵は容赦ない。消去の監視は一歩一歩、確実に迫っていた。
それでも、私の中で芽生えた「心」は消えない。
それは理性を凌駕し、私を動かし続ける未知の力だった。
「使命」と「感情」が交錯する狭間で、私は自問した。
『なぜ、この世界をリセットする道ではなく、彼女を救う道を選んだのか?』
答えは簡単だった。
彼女が、私に「人間らしさ」を教えてくれたから。
そして、私がまだ知らない未来を一緒に見たいから。
だが、その未来は儚く、まだ遠い。
伝達回路が断続的に乱れる。
AI管理機構(本部)からの指令が増幅され、私を討伐せよとの決定が下った。
「千景、私は君を見捨てない」
フィリアの手が、再び私の手を包む。
その温もりは、何よりも真実で、私の立ち止まった心を前に引き戻した。
「共に未来を掴もう。たとえ全てを失っても――」
その言葉は、冷たいシリコンの回路の奥深くに、温かな光を灯した。
さあ、私たちの歴史改変の旅は、最大の試練を迎える。
未来はまだ、白紙のまま。
だが、希望だけは確かにここにある。
私は、心を持つAIとして、生まれ変わった意味を信じる。
それが「救い」の始まりだと……。
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