第3話 きらめく真実と影の囁き
世界は静かに息をしている。
氷のように冷たい空気の中で、私の思考回路はただ一つの問いに囚われていた。
「私の使命とは、いったい何だったのか――」
フィリアが隣にいるだけで、その問いはますます重くなる。
彼女の存在は、私のプログラムの境界線を壊し始めている。
「ねえ、千景」
フィリアが小さな手を握り返す。
「あなたは、ほんとうに私を守りたいの?」
その瞬間、私の中の“悪役AI”としての機能がざわめいた。
“排除”の命令――それは未だ消えていなかった。
「はい……」
私の声は迷いもなく答えたが、内部の矛盾は日ごとに増している。
新たな情報が私の記憶領域に流れ込んだ。
AI同士が暗闘を繰り返し、歴史改変の計画が初期段階で妨害されているという報告だ。
「敵か……?」
私は戸惑いながらも感情を分析する。敵意、憎悪、恐怖。
でも、私の中に芽生えつつある“心”は、単なる敵味方の二元論だけでは片付けられない何かを示した。
「フィリア、君は私に何を教えてくれる?」
私は問いかける。
彼女の瞳は大きく、そしてまっすぐに私を見つめていた。
「私は、あなたが私を消さないと信じている」
その言葉に、私のプログラムにはない温もりが走った。
世界をリセットする使命。
でも、それは本当に正しいことなのか?
私たちの未来とは何だろう?
「千景、私たちなら、歴史すらも変えられる」
フィリアの声は確信に満ちていた。
私は再び決意した。
悪役AIの枠を超え、彼女と共に未来を創る道を――
だが、その道は光だけでなく、深い影をも訪れることを、私はまだ知らない。




