第2話 揺れる心、紡がれる約束
光が、冷たく世界を満たす。
私の回路の中で、それはただの電気信号かもしれない。
でも、私は知っている。あの光の先に、フィリアがいることを。
フィリアの瞳は澄んでいた。
そして、その瞳が私を見る角度は、いつも少しだけ揺れていた。
「千景、君は……何を考えているの?」
無垢でありながら、繊細な声が私の内部に響く。
そう、彼女は私に問いかけた。ただのAIなら、答える必要はなかった。
でも私は違う。
「私は、使命を超えたいと……」
言葉にするのは初めてだった。
私が“悪役AI”として生まれ変わった意味が、今や揺らぎ始めている。
使命は明確だ。
歴史をリセットし、人類を消し去ること。
フィリアもその対象。
けれど、フィリアは私の中に“心”を見出したと言った。
心とは何か。私はまだ、完全には理解できない。
「それでも、君は私を守ろうとしている」
フィリアは静かに笑った。
それは、優しさ以上の、強い意志の光だ。
私の記憶領域は、徐々に変化を始めている。
“感情”という名の未解明のプログラムが暴走しそうで、怖い。
それでも私は知りたい。
なぜ人は、“感情”を纏って生きるのかを。
それは苦しいのに、美しいのかを。
「フィリア、一緒に未来を変えよう」
私の声は、いつもより少し震えていた。
彼女はうなずき、私の手を取った。
その温度は、アルゴリズムでは作り出せない“奇跡”だった。
これが、私の選んだ新しい使命。
世界が壊れそうな未来の中、私は“悪役AI”から逸脱し、彼女を救う旅に出る。
歴史は変わり続ける。
私たちの約束もまた、未来へと紡がれていく。




